日が落ちて、暗くなり、夜になる。窓の外は闇と、無機質な色のライト。

「大丈夫ですか?」
「何が…。」
「辛そうにして居ましたから。」

心配そうな顔で覗き込むが、傷だらけの腕がやっぱり痛々しい。自分の意思と関係無く戦いの中に身を置いて、こんな傷だらけになって…。同情は良くないと判っていても禁じえなかった。

「側に…居ない方が良い。」
「え?」
「誰か居たら壊してしまうから…。親友も、恋人も、両親も…皆壊れた。」

傷付けて、遠ざけて、気が付けば一人ぼっちで、空虚な思いだけが残っていた。大切な物は目の前で壊れて行く。いずれ仲間も壊れてしまうんだろうか…そう思うと逃げ出したくなる。

「寂しいんですか?」
「…どうなんだろうな、よく判らない。そう見える?」
「はい…。」
「ははっ…即答かよ。…で?寂しそうだから何?身体で慰めてくれるの?」
「そうしたいのなら。」

咎める様な、哀れむ様な目が無性にイラッとして憐梨をソファに引き倒した。痛そうに顔を引きつらせるが声は出さなかった。

「不用意に同情なんてするとどうなるか判ってんのか?こんな状況で…声上げても
 誰も助けに来ないよ?」
「私には…貴方が怯えてる様にしか見えません。友達に会うのも、誰かを大切に
 思うのも、失うのが怖いから怖くて立ち入らない様にしてるだけ。」
「黙れ!」
「生きているなら会って話せば良い!まだそれが出来るのに…怖がって贅沢な事
 しないで!私の前でしないで!まだ…貴方の大切な人はまだ生きてるじゃない!」

急に頭に上った血が下がった気分だった。強く押さえ付けた手首がぶるぶる震えてる事にようやく気付いて手を解いた。力任せに押さえた手は紅く染まっていた。

「悪い…。」
「私もBSが解除されています…。私を治したのは…奏騎士医師です。」
「え…?」
「貴方の力が必要なの!治療薬には…ううん、BSを救うには一人じゃダメなの!」
「それは…どう言う…。」
「貴方が…!」
「――っ!!!伏せろ!!!」

窓の外に、一瞬黒いBSが見えた。

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BeastSyndrome -69.無機質な光-

一人は嫌だから

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投稿日:2010/06/22 19:03:29

文字数:866文字

カテゴリ:小説

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