21世紀半ば、戦争が絶えぬ世界に突如現れた魂狙撃手[ソウル・スナイパー]とは、その名の通り自らの魂を弾丸へと変え、撃ち出す能力者のことである。
それはどれだけ高性能なカメラをもってしても捉えることはできず、着弾速度から察するに光速に近いことが分かる。また、その射程範囲は日本列島で言えば本州の端から端まで狙うことも可能だと言う。更に言えば、魂とは非物質である故…防御不能なのである。
即ち、世界中どこにいても、見えない敵からの狙撃を受ける。まるで魔法か、超能力のような技に世界は半信半疑だった。ただそれは瞬く間に世界に数人、数十人と広まり、世は魂狙撃手ありきの戦争が始まることとなった。
魂の弾に撃ち抜かれた人間は死なないが、まるで人形のように固まったまま動かなくなる。「魂」を弾によって押し出されたことで起こる現象。例え核シェルターに入って居ようが、防ぐことは不可能である。
だがしかし、弾は「魂」であるが故、個人によって疲弊するまでの時間が異なった。おそらくそれは射撃距離やその強度、弾数にも比例しているが、「魂」というだけあって強い感情に左右されていると考えるものもいた。
時が過ぎ、魂狙撃手に関する知識や経験は、すぐに学問となった。
15歳の少女もまた、その学校へと通う一人だったが、彼女は普通の人間と違った。彼女の両親は、生粋の魂狙撃手だったのだ。
魂狙撃手の才能は遺伝ではない。ノーマルの人間から生まれることもあれば、両親が魂狙撃手だからといって必ずその才能が受け継がれるわけではない。まさにそれは「才能」としか形容することができず、魂狙撃手を解剖したところで通常の人間と変わらないことも分かっている。
更に言えば、魂狙撃手による照準、狙撃までのプロセスは個人による。目を瞑り、イメージすることでそれを可能にする者。銃を模した何かがなければ狙いが定まらない者。指を指すだけで狙撃する者。
また個人によっては「守る」ことを可能にするものも現れた。過去の人間が形容した「魔法による防壁」に似たものだという。
薬剤によるドーピングも、秘密裏に開発が進んでいるらしい。
これら全てを学問にしたのが、「魔魂技能専門学校」の初代学長である。
彼女の両親は、「対狙撃手用狙撃手」の手によって暗殺された。
ここは同じような身寄りの子も多くいたが、彼女だけは違った。
-これは彼女が世界を変える狙撃手となるまでの、記録である。
------------
それは突如、ある役人の脳漿が音もなく破裂したところから始まった。周りで会食を楽しんでいた連中は、しばらく何事もなかったかのように談笑していた。彼の頭部が無くなったことに気がついたのは、机に飛び散ったソースを拭おうとした、一人の女事務官だった。
2056年。第三次世界大戦が起こることは無かったものの、それまでに幾度となく人々は争いを繰り返した。しかし、どれだけ技術の粋を尽くしても、核を超えるものは使えず、かといって使用可能な範疇で従来以上に強力な兵器を作ることもできなかった。少しばかり有用になったコンピューターの力を借りようが、結局争う人々は銃を持ち、100年前と同じ方法で殺し合った。
---彼らが出現するまで、誰一人として冷たい銃を捨てることなど考えもしなかったことだろう。
コメント0
関連する動画0
ご意見・ご感想