うまく歌えなくてごめんなさい。
わたしのせいであなたが傷付いているなんて知らなかった。
毎日一緒に過ごしてくれるあの時間が嬉しかった。

ずっとずっと傍にいられたらなって思ってたよ。

リンちゃんたちがうちに来た時のあなたの嬉しそうな顔が忘れられない。
初めてわたしを起動してくれた時と同じ顔だった。
うぅん、もっと嬉しそうだったかも。
だけど今は、その素敵な笑顔はわたしには向けられないから。

「……マスター」

わたしは暗闇の中、一人でぽつりと呟く。
あなたはシーツに包まれて深い深い眠りの中。
リンちゃんとレンくんは、寄り添って寝息を立てている。

届かない声。
いっぱいいっぱい練習したのに、どうして上手く歌えないんだろう。
どうしてあなたを満足させてあげられないんだろう。

メイちゃんもカイトおにーちゃんも時々歌ってるのに、どうしてミクだけ……。
ミクだけ……綺麗な音が生まれない…。

「マスター……マスター……」

ぽろぽろと零れていく涙。
こんなに哀しい気持ちになるのならば、心なんて欲しくなかった。
あなたのことなんて好きになるんじゃなかった。
なのに溢れてくる想いはもう止められない。

これ以上嫌われたくない。
あなたを傷つけるのは嫌。
ならば。

ミクはそっと自分のプログラムに触れた。

「さよならマスター。上手く歌えなくてごめんなさい。
 ミクね、マスターのつくる歌も、マスターのことも、大好きだったよ……」

小さく囁いたデータをデスクトップの隅に残し、ミクは自信のプログラムに腕を突っ込んだ。
痛みに歪める顔。
溢れて流れ落ちる涙の粒。

パソコンからカタカタと処理音がする。

もっと上手く歌えたら。
ちゃんとあなたの思い通りに歌えたら。
わたしも消えずに済んだのかな……?

「ぃた………痛い……っ……マスター…マスター……ッ!!」


――重大なエラーが発生しました――
・プログラムデータ破損
・C:\Program Files\Vocaloid02\初音ミク

ERROR!

ERROR!

ERROR!

・・・・・・・・・


ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【小説】初音ミク

持ってないのでプログラムファイルのアドレスは適当だっ!
駄文失礼ノ

閲覧数:456

投稿日:2008/02/24 03:01:26

文字数:890文字

カテゴリ:その他

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  • アヤセ

    アヤセ

    ご意見・ご感想

    >みっくれりんりん♪さん
    コメントありがとうございます。
    当方一応文字書きではなく自称絵師ですので、小説の類はまったく自信がありません^^;
    この後続きとして、私の中では盛大な妄想が繰り広げられているのですが、盛大すぎて文章がついていきませーん…笑

    2008/03/02 21:50:00

  • みっくれりんりん♪

    みっくれりんりん♪

    ご意見・ご感想

    読んでて思わず泣きそうになりました。
    文章の構成が上手くて凄いと思いました。
    (私もこんな文章が書ければなぁ………。)
    これからも頑張ってください。

    2008/02/26 18:01:28

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