真っ白なベッドに傷だらけで眠る聖螺を見ていた。手当てをした医者の話では全身の殴られたと思われる怪我は勿論の事だが、極度の心身衰弱状態だったらしい。そしてどんなに引き剥がそうとしても、聖螺は言魂の銃を手放さなかったと。包帯だらけで青白く見える顔に時折不安が襲い、何度も呼吸を確かめる日が何日も続いた。レイや他の奴等や勿論、スタッフや聖螺の両親ですらも俺に休めと言って来たが、このまま目を覚まさないんじゃないだろうかと思うと恐ろしさで眠る事が出来ずに居た。一体どうしてこんな事になったんだろう?聖螺が適合者だったから?俺なんかの為に力を使ったから?俺が聖螺をこんな目に遭わせたのか?あの時助けなかったら…俺に会わなければ…俺が居なければ…!
「…ん…。」
「…聖螺…?!」
「あれ…?ゼロさん…?」
「聖螺?…聖螺!気が付いたのか?!」
「夢かと…思いました…。覚めたくない夢かと…。」
消えそうな笑顔と声で、僅かに手を彷徨わせた。繋ぎ止める様にその手を強く握り締める。
「…ごめん聖螺…もっと早く助けてやれなくて…。」
「ゼロさん…?」
「ごめん…。」
「私なら…大丈夫です…ほら、ね?」
ゆっくり体を起こして無理に笑う聖螺に、頭の中で何かが音を立てて崩れた気がした。
「嘘吐き…。」
「え?」
「ちゃんと言えよ…!痛いとか、恐いとか…大丈夫な訳無いだろ!何で言わないんだよ?!
何で我慢するんだよ?!そんな…そんな嘘何で吐くんだよ?!」
聖螺は一瞬驚いて固まっていたが、途端にポロポロ涙を零した。
「だ…だって…だって…!嫌われると思っ…!い…嫌がってるって…!迷惑だって…!
王子様とか…きっと馬鹿みたいだって思ってるくせに!」
「ああ思ってるよ!気紛れで助けただけで何で王子様だとか!何で俺庇って階段から
落ちたんだよとか!こんな傷だらけになっても何でずっと俺の事守ってるんだとか!
何で俺なんだよって最初から思ってるよ!」
「私には充分王子様なんです!」
「――っ!」
此処は病室で人が入って来るかもとか、聖螺は怪我人だとか、会話の流れとか雰囲気とかロマンとか綺麗とか汚いとか、何かもう色々引っ包めて尚止められない衝動任せに思わずキスしてた。
「…王子様…。」
「俺で良いの?」
「わ…私には…充分王子様です…!王子様なんです!…うぇ…うぇええええ~~…!!」
真っ赤な顔で泣きじゃくる聖螺をあやす様に抱き締めた。恐かったとか、痛いとか、泣き震えてよく聞き取れない声で、それでも何度も『王子様』と呼んでいた。やがて聖螺は泣き疲れたのかしがみ付いたまま再び眠ってしまった。
「全く…物好きなお姫様だ…。」
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