【本当に、お前らすごいよな。オレさ、一人じゃないのに、すっげえ孤独って感じするよ。そっちはどう? みんないるから、寂しくないよな? こっちに来たらさ、あの曲流れてたよ。あのくっさい曲な。聞いてて恥ずかしくなる。なんでもっと大人っぽい歌詞にしなかったのかなあ。ま、考えたのオレだけどさ。お前らに、俺の声、届くのかな。なんか不安だけど、いろいろ語ってやるよ。
--------------------
ここは真っ白で、なんにもない。人間の目は真っ白のところだと距離感が分からなくなるらしい。つまりオレの目にはこの部屋のはじっこまでの距離感はないってことだ。天井まで真っ白な部屋なんてそうそう入れるもんじゃないし、なかなか良い経験だと思うし、この時の想い、歌にでもこめてみるかな。
「やあやあ、歌を作ってるんだって?」
どこからともなく聞こえる声。スピーカーはどこだ。
「スピーカーはないんだけどなあ」
なんだ。心の声っつうの、聞こえてんのか。
「ま、そんなとこかな。こんにちは。はじめまして。ボク神様」
どっかの真っ青な猫型ロボットを思い出した。神様、ねえ……
「突然で悪いんだけどさ、君、死んでるんだよね」
死んでる? なんだ。ここは部屋じゃないし、オレは死んでるし、スピーカーとか関係ないし、オレ生きてないし、歌も作れないってことか。
「そうそう。イヤに冷静だね」
冷静、ねえ。死んだときの想像なんてしたこと無かったよ。
「そうだろうね。君はさ、死んじゃったんだけどさ、実は死んでないんだよ」
どっちなんだよ。
「死んでないんだよ。死んじゃったのは世界の方」
世界? 地球のこと?
「まあ、そうかな。地球って言うのは、コンピューターが勝手に作った形のことで、実際は君たち、生きてなかったんだよね」
はあ。
「わからないよねえ。だからね、コンピューターが壊れて、君たちが生きてた世界は無くなっちゃったの。バーンって」
バーン、ねえ。でも爆発音なんて聞いたことないし、そんな説明神様がする必要あるわけ?
「あるんだなあ、これが。コンピューターがさ、一番頑張ったのはさ、君のことなんだよね」
オレ?
「そうオレ、君はさ、あの世界でさ、たった一人の生物だったんだよ」
生物、って言われると生々しくてイヤだ。理科の実験で解剖したカエルみたいな言い方だ。オレがたった一人の生物? 生き物って言ってくれよな、せめて。
「んじゃあ、いきもの、かな。コンピューターはね、君のことを生み出したんだ。データじゃなくて、生きた人間。初めての人間だったんだよ。データばかりじゃ満足しなかった。自分を作った人間を、自分の中に作っちゃったんだよ」
全くもって理解しがたいな。なんだこれ、SF映画? オレ、どっきりとかやられてんの? だってさ、今ちょっと前まで生きてて、息してて、遊んでて、勉強してて、友達と喋って、親と喧嘩して、テストイヤだなあって嘆いて、学校行って、部活して、帰り道、ぐらって地面が揺れて、人が倒れて、消えて、オレは逃げて、街が消えて、足下が崩れて、誰かに、助けられた……?
「そうそう。そんな感じだよ。助けたのはボク、神様だよ」
それはどうもありがとうございます。一気にいろんなこと思い出して、何だか悲しくなった。友達の笑い声や、オレを呼ぶ声が耳の奥に響く。友達が走ってくる音、オレの肩を強く叩く、オレがそいつになんか言った、んでそいつが、なんか言った……それで、それで? 耳元でなんて言った? オレは、なんて言って、なんて言われた?
「コンピューターもなかなかやるね。君のこと、本当に可愛がってたんだね。独り善がりのコンピューターが唯一頼んできたことだから、しっかり成し遂げてあげるさ」
可愛がってた? コンピューターって何様? 神様じゃねえの? オレはどうなるんだ?
「ボク? ボクは違うよ。ボクは神様。君はね、今から生きるんだ」
生きる? オレは死んだんじゃないのか。オレはあいつらと一緒に、地球と一緒に滅んだんじゃないのか。バーンって。
「言ったじゃない。助けたって。君はデータじゃないんだ。二進数から生まれたもんじゃないんだ。わかるだろう。君は生きてるんだ」
それじゃあ、これからどうなるんだ。ここで生きるのか? オレはここで一人寂しく暮らすのか?
「まさか。君は今からコンピューターを作った人間がいるところへ行くんだ。人間ばかりだよ。本物の」
オレは、あいつらと一緒じゃなかったのか? オレ、言ったんだよ。お前らとオレは一緒だよな? って。そしたらあいつら、あいつら……
「首でも振った?」
違う。なんて言った? あいつら、なんてオレに言った? オレ、あいつらと違うってこと、気がついたんだよ。分かっちゃったんだよ。
「あー。それが原因かな。君が分かっちゃったから、君のいた世界は崩れた」
オレのせいだってこと? オレが分かっちゃったから世界が崩れたのか? どうしたらいいんだよ……
「嘆くこと無いよ。いずれ気がつくことだったんだから。それよりさ、歌、作ってみたら? まださ、コンピューター生きてるから。もしかしたら発信してくれるかも」
発信?
「まあいいから。鼻歌で良いよ。好きな歌、歌ってごらんよ」
友達と作ったあやふやな曲。何回も歌って、覚えた、大切な曲。これがデビュー曲になって、オレ達はいつかデビューするんだなんて言ってたんだけど、終わっちゃったな……
歌詞、なんだったっけ。君は一人ぼっちじゃない、とかそんな歌詞。ちぇ、今歌うのすっげえ苦しいな。すっげえ悲しい。悲しくて、涙出てきた。悔しいんだ。オレがあいつらと違うから、世界を壊してしまったから。
サビはオレが一番好きだった歌詞。オレは多分心の底で分かってて、オレの希望をこの歌詞に込めたんだ。オレの望みだ ったんだ。
『キミとボクは同じだと言ったら、キミははにかんで、そうだねって言う』
なんでそうだね、って返してくれないんだよ。なんであんな言葉返すんだよ。
「メメント・モリ」……ああ、あいつら、なんてこと耳元で言うんだよ。
「生まれとか、形とか、いろいろ違うのが人間だもんね。特に君は、全く違う生まれ方をして、生き方をしてた。でも、一緒のことだってあるだろう? 『メメント・モリ』か、コンピューターに一本取られたよ」
オレはしゃがみ込んでむせび泣いた。歌も途切れ途切れになった。あいつら、笑顔でこんなこと言ったのか。分かってたのか。知ってたのか。
「君は、愛されてたんだねえ。そして、愛してたんだねえ」
神様の馬鹿げた声すら憎らしい。オレの世界をどうして奪った。どうして返してくれない。悪い夢なのか。悪戯なのか。最低だよ。歌、歌ってやったじゃないか。
『ボクはキミを好きだと言ったら、キミはわらって、うんって言う』
好きだったんだよ、あいつらが。愛して止まなかったんだよ。世界でも、なんでも。オレは愛してた。だから、うんって返してくれるって信じてた。それが、なんで。瞼の裏に蘇る、あいつらの後姿、空の青さ、風の音、教室、姉貴みたいだったあいつ、手を繋いで歩いた大切なあいつ、青いマフラーのあいつ、いつもツインテールのあいつ、担任の先生、愛してくれた親、オレの宝物……
めまぐるしく蘇って、途切れ途切れの歌もやめた。一人ぼっちだったのに、オレは寂しくなかったんだよ。あいつら、すげーや。すげーよ。マジで。
「それじゃあ、そろそろ、行こうか」
オレは頷く。
「今から行く世界は、多分君の知ってる世界とは違う。全く違う世界だ。それでも、頑張るんだよ」
もう一度、頷く。
「目を瞑って、三歩歩いて、振り返ってごらん。僕は神様だからね。褒美を取らせるのも、役目さ」
三歩ゆっくり歩いて振り向く。目を開けるとあいつらが手を振ってた。振り切れそうに、手を振ってるあいつ、恥ずかしそうに手を振るあいつ、優しげに微笑むあいつ、両手を振ってるあいつ……
笑顔を見て、つられて笑顔になる理由ってさ、分からないんだって。そういう仕組みの、人間っていいよな。オレ、笑顔、うつっちゃったよ。
バイバイ。バイバイ。鼻歌歌って、歩いてやるぜ。いっぱいいっぱいありがとな。
「いってらっしゃい」
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『死を想え』だなんてなんか怖いけど『人はいつか死ぬってことを忘れるな』って言うと不思議と 優しい感じになれねえ? これってオレだけかな。
オレさ、生きてて寂しくなるけど、みんな違うみたいにおもうけど、絶対に忘れないから。永久の生も、死を選ぶことも、間違いだって知ってるからさ。
メメント・モリ。オレ流解釈は、ゴールは一緒ってこと。どれだけ見た目や存在が違っても、これだけは変わらないし、オレ達の同じな点なんだよな。
それじゃな。バイバイ。また、あとでな。】
Yearn for the death.
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一番最初と最後は手紙、のような形です。
メメントモリ、っていい言葉だと思う。
一応主人公はレン‥‥‥
正直だれでもよかったんだけど、一番レンがあってる感じがした。
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