遮断機が降りた
黄色と黒のツートンカラーが目に痛い
冬ももう本番だというのに、今日はやけに日射しが強かった
目線を下げれば、冬特有の低い太陽からの日射しで長い影が出来ている
それを呆然と見下ろした

電車はまだ通らない

ふと名前を呼ばれた気がして顔を上げた
踏切の向こうには誰もいない
きょろきょろと見渡した辺りにも、やはり誰もいなかった
シンと静まりかえった昼下がりの小さな踏切
カンカンという警告音だけが鳴り響く
それを五月蝿いと思いながら
ただ立ち尽くした

電車はまだ通らない

強い風が吹いて長い髪がなびく
その行く先を追った視線の先の線路
電車の姿はこれっぽっちも見えないまま
カンカンカンと赤ランプが点滅する

電車はまだ通らない

耳鳴り
治れ治まれと首を振って
振りすぎてクラクラ
吸い込まれるように
一歩
呼ばれているかのように
一歩
近づく遮断機
鳴り響く警告音
あぁ
あぁ
あぁ
近づく
あと一歩、で

「ミク」

名前を呼ばれた
振り返る

「・・・兄さん?」

右手にはアイスがたくさん入ったスーパーの袋
マフラーが風になびいた

「帰ろ」

差し出された左手
笑う
走って
左手を掴むだけじゃ物足りなくて勢いのまま抱きついた

「兄さん」

「帰ろう?」

言葉に頷いて
今度こそ左手を取った


遮断機は降りたまま

電車はまだ通らない

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

遮断機

閲覧数:83

投稿日:2010/12/04 03:29:20

文字数:585文字

カテゴリ:小説

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