キィィーーーン
「……うそ」
金属が激しくぶつかる音に顔を上げたメイコは、我が目を疑った。
「助けに来たわ……」
神威メグミが刀を構え、狂音獣に対峙していた。
「え?」
「聞こえないの? 貴方は気に食わないけど、助けに来てあげたのよ」
メグミはすぐに腕時計型のメロチェンジャーを天に掲げた。
「兄さん、行きます。コードチェンジ!!」
メグミの全身が光に包まれ、紫色のスーツをまとったカナデパープルに変身した。
「……どういう風の吹きまわしだ?」
カイトも目の前の光景に戸惑いを覚えていた。
「話は後で。とにかく、行きます」
日本刀を持って、やみくもに突っ込んでいくメグミに、カイトは思わず、
「バカ、こいつは……」
言いかけたが、遅かった。暗器に体を切り刻まれ、メグミは弾き飛ばされてしまった。
「あーもう、状況をややこしくしてるだけじゃないの!!」
ミクは拳を握りしめ、メグミの救援のために走り始めた。それを見て、レンも走り始める。
「ちょっと、勝手なことしないでよ!」
「何ですって!!」
ミクの一言にメグミが怒りをあらわにする。狂音獣をそっちのけにして2人は睨みあいを始めた。
「ミク姉、今はそっちに……」
レンが言いかけた瞬間、マッド・ギミックが炸裂弾を放ってきた。
「危ない!!」
メイコとカイトが言いかけた瞬間、3人は吹き飛ばされていった。
「ルカ、こうなったら最後の手段よ」
ハクは眠気を必死に抑えながら、ルカに提案をしていた。
「……どうするつもりですか? もう一度作るにしても……」
「私のメロチェンジャーを改造するの。私も銃を使って戦った。だから……」
「しかし、コアの……」
「貴方達の作った者と比べれば、能力が落ちるかもしれない。でも、時間がない。そうでしょ」
「そうですね。しかし……」
「私は逃げていた。ガクトの事を言い訳にして……でも、私の力をあの子に渡すのがせめてもの償い」
「…………わかりました」
「すぐにリンを連れてきて」
ルカは頷くと、すぐに指示を出した。
暫くして、リンが研究室に呼ばれた。
「リン、私のメロチェンジャーを使って戦って」
「ハク?」
いまいち状況を理解していないリンだったが、
「メロチェンジャーを直している時間がないの。ごめんなさい」
という、ルカの言葉に頷いて見せた。
「コアの部分は、貴方が今まで使っていた物よりもだいぶ能力は落ちるわ。でも、今は後方支援に徹してほしいの。ルカと一緒に6人で戦う事が出来れば、きっとあの狂音獣も倒せるはずよ」
「うん。わかったよ」
まだ何か言いたそうな表情をするリンに、ハクは手を握り、しっかりと彼女の顔を見据えた。
「いいかしら、カナデホワイトは、カナデンジャーの秩序を司る戦士。貴方には、まだその意味が十分に理解できないかもしれない。でも、それはおいおいに理解していってほしいの」
ハクはカナデホワイトの変身用のプロトタイプのメロチェンジャーと変身用のカードを渡した。だが、そのカードは白紙で何も書かれてはいなかった。
「これは?」
白紙のカードをリンは不思議そうに見つめる。
「これに、音楽記号を書いて仲間を助けていくの。カナデガンに、このカードを装着すれば、音楽記号と同じ効果を短時間ではあるけれど、その効果を発揮させることができるわ。もちろん、このカナデガンは普通に銃として使う事が出来る」
後ろから眠そうな表情を浮かべたルカが、服を着替えてやってきた。
「行きましょう。みんなが待ってます」
「あんた一体何しに来たのよ!!」
ミクは怒りの表情を浮かべ、メグミを睨みつけた。加勢するどころか、状況を悪化させてしまっていた。ミクはレンとメグミを連れて建物の陰に隠れ、今はメイコとカイトが戦っている。だが、2人もいつまでもつかわからない状況だった。
「そういう言い方はないでしょ! 私だって、狂音獣が跋扈する世界がいいとは思ってない」
「だからって……」
既にこの2人に狂音獣の事など眼中になかった。
「あいつら、何やってんだ!!」
防戦一方の2人は、必死に猛攻をしのいでいる。
「カイト、ザツオンを排除して。このままじゃ」
「わかった」
カイトがザツオンに戦いを挑む間、メイコは一人で孤軍奮闘する事になる。ザツオンの攻撃をかいくぐり、マッド・ギミックに肉薄するメイコ。しかし、思わぬ方向から再び攻撃され、メイコはまたも吹き飛ばされた。
「……これじゃ、きりがない……」
カイトも必死に矢を放つが、思い通りにメイコの援護が出来ていない。
「せめて、6人そろっていれば……」
レンはブレイブ・ロッドを手に戦ってはいるが、もはや限界が近づいていた。
満身創痍の5人に、マッド・ギミックが大型のバズーカを向けた。
「……くそっ!」
その時、不意にメイコは自分の体から力があふれだす感覚を覚えた。
「これって!?」
メイコはすぐさまその力がなんであるかを悟った。
「間に合いましたね」
ルカが大型のバズーカを手に現れた。そして、その隣には、拳銃を手にしたリンが姿を見せる。
「これでも食らいなさい!!」
リンはマッド・ギミックに向けて、弾丸を放つ。それに対応するために注意がそれた瞬間、メイコはマッド・ギミックの懐に入り、斬撃を食らわせた。狂音獣は腕を数本切られ、持っていた武器を落とした。
「生まれ変わった私の力、みんなに見せてあげる。ルカ姉!」
「はい。行きましょう」
リンとルカがメロチェンジャーを構えた。
「コードチェンジ!!」
ルカはカナデピンクに変身する。
「きゃああああ!! 何よこれ!」
次の瞬間、リンが悲鳴を上げた。無事にカナデホワイトに変身できたが、ハクの体型に合わせて作られた強化スーツのおかげで、胸のあたりが大きく開き、ウエストが心なしかきつい。
「リン、もしかして、ウエストが……」
「そ、そんなことない」
意地をはってはいるが、胸のあたりが大きく開いているのはどうすることもできない。
「は、恥ずかしよ」
リンは情けない悲鳴を上げるが、いまさら引き返すわけにもいかない。
「メイコ、急いで! 時間が……」
「そうね。ありがとう。リン」
とっさに話題をそらしたリンだったが、メイコはそれを素直に聞いてあげた。
「行くわよ。私の力、見せてあげる!」
今までよりも動きが格段に早くなったメイコは、そのスピードでマッド・ギミックを翻弄していった。
リンは『アレグリッシモ』の記号を書き、カナデガンを放った。その記号の意味は、「極めて速く」である。この記号の意味通り、メイコは今までとは見違えるほどの高速で動き始めた。
「すごい! これが、カナデホワイトの力」
リンは驚いたようにカナデガンを見つめる。
「リン、よくやりました。正直、心配だったのですが……」
ルカの言葉も聞こえないかのように、リンは茫然と手にした力に驚きと畏敬の念を持った。
「さあ、仕上げです」
「行くわよ!! コーダ・スラッシュ!!」
高速で移動するメイコの剣が、あっという間にマッド・ギミックの腕を切り落としていった。そして、胴を切り裂き、勝負あったかに見えた。しかし、マッド・ギミックはふらふらの状態で立ち上がった。
「撃ち漏らした!? こうなったら……」
「メイコ、これを私達と一緒に使ってください」
ルカはすぐにメイコを呼び寄せた。既にカナデンジャーの6人がルカのそばに集結していた。
ルカは大きなバズーカ砲を持ってきていた。
「ようやく完成したのね。これって、あの時、作りかけだった」
「はい。これは3人のヴォイス・エナジーを結集させて狂音獣を倒すための、決戦兵器。アコースティック・バズーカです。あれから改良を重ねて、ようやく完成しました。さあ、メイコ、リンと私の3人で」
「わかった」
メイコはバズーカの右に、ルカが左に立ち、バズーカを支える。そして、リンが引き金を手にする。
「ロックオン、完了!!」
リンが叫ぶと、バズーカの砲口が光り始めた。
「今までの借り、全部返させてもらうわ!! アコースティック・ファイアー!!」
光の弾丸がマッド・ギミックを撃ち抜いた。そして、大爆発を起こし、苦しめられ続けたマッド・ギミックを倒した。
「ダイオンリョウ、サイセイ」
不気味な声が響き渡り、マッド・ギミックが巨大化する。ビル群の中に現れたマッド・ギミックは腕を伸ばし、周りの建物を破壊していく。
「来たわね。ハク、お願い」
「OK。カナデモービル、いつでも発進できるわ」
「みんな、もうひと頑張りよ」
メイコの励ましに全員が頷いて答える。
「みんな、心を一つに!」
「一つに!!」
6人の声が響き渡り、カナデモービルが合体を始める。そして、合体が完了し、シンフォニー6が完成した。
「さて、相手はどう来るかな」
操縦を担当するレンは、相手との距離を取りながら慎重に接近する。
「ギミックによる攻撃を避けたいわね」
ルカはすぐさま敵情分析にかかる。さんざん煮え湯を飲まされてきた相手だけに、全員が慎重になりすぎていた。敵はそこを突いてきた。考える暇を与えないように、ビルを破壊して現れ、腕を伸ばし、剣を持ち出した。
「逃げろ!」
慌てたレンはあいまいな指示を出してしまい、マッド・ギミックの攻撃をかわそうとしたが、剣が右腕を直撃し、衝撃がコックピットを襲う。
「迷ってちゃだめよ! レン、すぐに相手と距離を取って」
思い切りのいいリンがすぐさまレンに指示を出す。
「今までの借り、全部返してもらうからね」
「おい、リン……」
「ガンガンいくわよ! ショルダーガンを撃て!!」
リンが叫ぶと、ロボットの肩から弾丸が飛び出す。狂音獣はそれを気にせずに前進しようとする。
「さて、今度はフットガン!!」
シンフォニー6の銃器がどこに仕込まれているか把握しているリンは、マッド・ギミックの動きを見ながら次々と指示を出す。
「レン、少しリンにまかせてみましょ」
「う、うん……」
役割を奪われた事に少々、がっかりしながらも、ルカの指示に従った。
「次は胸!!」
予想外の場所から銃撃を受け、狂音獣は少しずつ後退する大通りに足を踏み込んだ瞬間、突然、バランスを崩して後ろに倒れ込んだ。
「何だ!?」
「地下道の入り口に足を取られたのよ。今がチャンスよ!」
メイコに続いて、6人が歌い始める。すると、光響剣が現れ、光り輝き始めた。やがて、6人のヴォイスエナジーが最高潮になり、まばゆいばかりの光がシンフォニー6を包みこむ。
「さあ、これで終わりよ! Gクリフアタック!!」
ト音記号の軌跡をたどり、剣がマッド・ギミックに振り下ろされる。真っ二つになったマッド・ギミックはそのまま倒れ、大爆発を起こした。
「さ、これで終わり。帰還するわよ」
「了解」
リンから操縦を変わったレンは、マイクに向かって「帰還せよ」と指示を与えた。シンフォニー6は、ゆっくりと『オクトパス』へと帰っていった。
「…………私は、やはり無力だった」
メグミは、今日の戦いの事を思い起こしていた。だが、現実はこうも残酷なものかと改めて思い知らされることになってしまった。
「…………誰?」
気配を感じ、振り返った瞬間、メグミは強い衝撃を受け、意識を失った。
「お前も戦わせてやろう。だが、私の僕としてだがな」
シスター・シャドウはザツオンに指示を出した。
「カナデンジャー同士の戦い……楽しみだな」
シスター・シャドウとザツオンは、メグミを抱えたまま、闇に溶け込み消えていった。
光響戦隊カナデンジャー Song-17 放て! 必殺の一撃! Bパート
先ほどの続いて、Bパートの投稿です。
時間はかかりましたが、なんとか完成です。
これからも良ければ、読んでください。
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