「約束守れなかったって、何よ?」
私はできるだけ、気付いていると悟られないように言う。
「え?覚えてないのか?・・・それならいいんだが。」
覚えてるよ。忘れれるわけない、大切な約束。
でも、守ってもらえなかった。大切な約束、なはずなのに。
「覚えてないって何のことなの?きちんと聞かせて?」
清水は、表情を脆く歪める。
「小さい頃に俺とお前で、約束したんだ。ずっと二人でいようって。」
そうだ。私の好きな人は、この人しかいないのだ。 あなたは違うんだろうけど・・・
「そう、だったわね。 守れなかったの・・・?」
泣きそうだった。必死に我慢した。
「・・・ごめん。本当、ごめん。 それしか言えない。」
清水は俯いてそういう。泣きそうな声で。 泣かないでよ・・・
「ごめん、って何よ? 何なの?どういうことなの?」
聞かずにはいられなかったのだ。 傷つく答えが返ってくるだけなのに。
「本当に言ってもいいのか?」
清水が顔をあげ、覚悟を決めたように言う。
私は迷う。 結果は自分が傷つくだけだと分かっているから。
「いいよ。」
私は言う、笑って。
「俺、他の子を好きになったんだ。 今は違うけど、でも、好きになってさ。付き合ったりしたんだ。」
付き合ったり、した。 他の子を好きになった。
それが事実。 事実なのだ、それだけが。
「そう。」
それだけしか言えなかった。
「ごめんな。あれだけ約束したのに。 本当、ごめん。」
そうだ。そのとうりだ。 あんなに約束したのに、破るのか。死にたい。
「いいよ。約束なんて、所詮約束。 好きになってしまったらどうしようもないから。 いいよ。」
笑え、自分。 言い聞かせて表情を作るが、上手くいかない。
無理して笑わなくていいよ、と清水は笑う。 私を落ち着かせてくれるように。
そして、今まで見たことのない顔つきになり、声を発する。
「今の俺は、お前のことが好きだ。」
意味がわからない。 分からない。状況が飲み込めない。
「・・・え?」
小声で、尋ねる。
「だから、俺はお前のことが好きなんだよ。」
清水は言う。 今自分自身が好きな相手は、自分なのだと。
「本当なの・・・?」
聞いてしまう。 聞かずにはいられない。
「ああ」
これが、私の望んでいた言葉だ。
「私も、好きだよ。」
私たちは、恋人になった。
それは、とても嬉しいはずなのに。 私は泣いていた。
続く
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