LEDライトの光が、電源を断たれ闇に包まれた変電室を照らした。
しかし、その光によって確保できる視界はかなり制限されている。
それでも無いよりは断然いい。
さて、これでこの施設のセキュリティーは完全にシャットダウンし、空挺部隊が突入できる状態となったわけだ。
『タイトさん。電源の破壊に成功しましたね!』
「ああ。その証拠に、何所もかしこも真っ暗だ。」
『ライトがあれば大丈夫でしょう。とにかく、たった今、一万フィート上空で待機している空挺部隊に連絡しました。あと一分でそこの制圧が開始される予定です。予備電源か、自家発電装置に切り変わる時間は、ざっと三十分です。』
「それだけあれば十分だな。」
『加えて、たった今沿岸で待機していた空母雪峰からソード隊のX/AF-49と雑音さん、そしてF-18四機が発艦しました。残り十分で、施設周辺のレーダーを空爆する予定です。』
「ミク達だな。」
『そうです。さぁ、タイトさんも、すぐに次なる目標へと向かってください。』
「ああ。空挺部隊の、核弾頭解体の援護だな。」
『ええ。そこから約北五百メートルの場所に、ミサイルが装填されたミサイルサイロがあります。そこへ急いでください。一番近いルートは、屋外の渡り廊下しかありません。』
「渡り廊下?」
『はい。この際、もう敵の心配をしなくても結構です。既に空挺部隊が降下を完了したようなので、そのまま突っ切ってください。先ずはその部屋を出て、建物最上部を目指してください。』
「了解。任務を続行する。」
俺はライトの光を頼りに変電室を出た。
無論部屋の外も漆黒の闇に包まれている。
ライトの光だけを頼りにして、俺は早速発見した階段を駆け上がっていった。
最上部、ということは、この階段を上り切ればいいわけだ。
階段を駆け上がる途中、何所からとも無く銃声が響いた。
その銃声は幾つも連なり、やがて怒号や叫びが入り混じっていった。
どうやら空挺部隊が施設の制圧を始めたらしい。かなり迅速に行動している。
階段を上りきると、短い通路の先に窓のついた扉がたたずんでいた。
もう迷うことは無い。
速度を緩めることなく扉の向こう側へ突入したその瞬間、深夜の強風が俺の体を揺るがした。
ライトで照らした先の渡り廊下は、屋根も無く、コンクートの簡素な端だった。向こう側は遠すぎてライトの光が届かず、確認できない。
俺はただ真っ直ぐなその道へ走り出した。
暗闇の中から幾つも響く銃声、怒号、悲鳴。
その音に混じり、新たな音、銃声や声よりも遥かに巨大な音が、暗黒の空より飛来してくるのが分かった。
あの音は・・・・・・そう、聞きなれた音だ。戦闘機のエンジン音。
これはソード隊。ミク達だ!
その音はやがて耳を劈く轟音となり、俺の頭上を通過して行った。
そして次の瞬間、強烈な爆発音と共に燃え滾る業火が、森も、施設も、そして俺自身も朱に染め上げた。
ソード隊によって、ミサイル発射管制レーダーが爆撃されているのだ。
空対地ミサイルが巻き起こす爆発は幾つも続き、森のあらゆる部分から火の手が上がり、森は炎によって煌々と照らされ、まるで昼間のように明るい。
俺はいつの間にか、走るのを止めてその様子に見入っていた。
森を覆いつくし、無差別に全てを焼き尽くす非情ともいえるその業火が世界を朱に染め上げた壮絶な光景を、俺は一瞬だけでも見とれていた。
いや、こんなものに見とれている場合ではない。
俺には、まだやらなければならないことが残されている。
再び走り出した頃には、既に反対側の扉が見えていた。
あの光景の影響で興奮した俺は、その扉を蹴り倒し、更に奥へ奥へと進んでいった。
『タイトさん。ミサイルサイロ施設に到着しましたね。』
「ああ。割と狭い建物だな。」
『後はもう私が言うまでもありませんね。そこから先の通路は、わき道や小さい小部屋を覗いて一本道です。ひたすら真っ直ぐ進んでください。そうすればすぐにミサイルサイロにたどり着けます。なお、そこは既に空挺部隊が制圧したそうなので警備の心配はありません。』
「分かった。」
俺は言われるままに、そこから最も大きな通路を走り抜けていった。
先程まで聞こえていた銃声や悲鳴、鼓膜を揺るがす爆発音は次第に小さくなり、残ったのは鉄製の床を駆ける俺の足音のみとなった。
ゴムが鉄を打ちつける音が、ライトの光が届かない、闇の向こう側へと、ただ虚しく響く。
そして、ライトの光が、あるものに突き当たり、反射した。
「ここか・・・・・・。」
ライトが光を反射させたものは俺の頭上、五メートルはあろうかというほどの高さの、扉だった。
一見パスワード等でロックが掛かっていそうだが、セキュリティーが落ちている以上、そんなものは無効化されているはずだ。
しかしそれは、同時にこの扉は自動では開かないということだ。
「・・・・・・あれだな。」
扉に取り付けられた小さなカバー。それを開くと、そこには異常が起こったときのための、手動開閉レバーが姿を現した。
俺はそれを掴み、腕に力を込めて赤い矢印の指す方向へずらした。
割と力が要るな・・・・・・。
徐々に扉が開いていき、俺が通れる幅まで開かれた。
その先からは、眩い光が漏れている。
俺は即座にその光の中に飛び込んだ。
「大佐。たった今、到着した。だか・・・・・・。」
・・・・・・?
これが・・・・・・。
「核・・・・・・だな・・・・・・? 」
それは、俺の想像していた核ミサイルではなかった。
目の前にそびえる巨大な物体。それを一言で表現すれば、
怪物。
SUCCESSORS OF JIHAD 第七話「駆ける」
ぶっちゃけ言います。
前作も前々作も、この作品にとっては、助走か準備に過ぎません。
つまり、もともとこの作品のために書いたということです。
「X/AF-49」【架空】
2010年、フリービア共和国空軍のATF計画によって開発された二種の機体の中から不採用になったものを日本防衛空軍が買収、そして各重機工業企業との協力によって改良を加えられ新規に開発された超高性能戦術戦闘機。
空力特性を徹底した滑らかなブレインデッド・ウィングボディに、全遊可動前進翼、カナード翼、そして強力なエンジンに取り付けられた推力変更ノズル、更には逆噴射装置の搭載で今まで不可能だった機動を実現することが可能となった上、垂直離着陸能力までも持つ。なお、最大マッハ3でのスーパークルーズが可能である。
アビオニクスも一新され、最新鋭のものが搭載されている。
ステルス性能を除く全ての性能がかのF-22を大きく上回り、特に格闘戦においてはどの航空機も全く歯が立たない性能を持つといわれている。
まさしく世界最強と証するに値する機体だが、その高性能ゆえに、一般のパイロットでは最高性能を発揮する以前に、機動時にかかる負担に耐えられないと懸念されていた。実際の実験飛行の際、テストパイロット四名が性能の六十パーセントも発揮しきれずに、内臓破裂を起こして死亡している(パイロットの生体反応が消えたことを確認した機体がオートパイロットで着陸したため、機体の損傷は無かった)。
この事故によりパイロットは常人よりも強化された肉体を持つ人間が必要とされ、当時科学企業クリプトンの子会社、クリプトン・フューチャー・メディカルズで研究されていた、人体の肉体強化に着目し、協力して開発を進行、そして全国から集められた百人の戦闘機パイロットを被検体とし、九十七回に及ぶ失敗の末、三名がパイロットに適した肉体強化に成功する。
その後強化人間となったパイロットと、更にクリプトンで実用段階に達していたゲノム人間との実験で百パーセントの性能を出すことに成功。その後も数十に渡る実験と、強化人間用の改造を経て、実戦配備される。
この機体は開発費、整備費共に恐ろしく高額な上に、まだ開発が安定していない強化人間を必要とするため量産の計画は無く、配備された水面基地での運用を評価しながら、今後の展開を考案していく予定である。
コメント0
関連する動画0
ご意見・ご感想