エリーゼ独特の丸いテールが目の前にせまる。そのまま右に車線を変え追い抜いていきミラーで確認すると、蓮が笑っているのが見えた。ただでさえ、腕が違うのにロータスエリーゼとF355では勝負にならない。ストレートでは押さえて走り、少しのあいだ2台はバトルする。下りの右コーナー3速から2速にシフトダウンわざとパワースライドでテールを振る、蓮もまねをしてテールを振っているが見えた。次の瞬間エリーゼがスピンする、私は左によってハザードをつける。
「相変わらずへたくそだな」
「国際A級のライダーと一緒にするなよ、俺はメカニックなんだから」
 苦笑しながら蓮は煙草に火をつける。
「ところで、おまえがこんな朝早く俺のけつを追っかけまわすのは何か話があったからだろ、釣りに行く時以外、おまえのお日様は9:00にならないと上がらないからな」
 今度は、私が火をつけるばんだった。
「昨日の夜、電話があったんだ」
「誰から」
「10年以上の付き合いになる探偵だ」
蓮は煙草を捨てて俺を睨む。
「俺の睨んだとおり、メーカーがらみだな」
「そこだ、何でメーカーがらみなのか俺にはわからん」
 俺は煙草を踏み潰し空を見上げた。
「実はおまえには言ってなかったが、あの頃かなり強引にメーカーから誘いがあったんだ、あまりにもやり方が汚いので俺は100億積まれても絶対に契約しないと言ってやった」
「おまえの馬鹿は昔からか、レースをしていてメーカーの誘いを蹴った奴を始めて聞いた」
 蓮の言う通りだった、これ以上無いと言う条件をメーカーは提示してきた、俺自身もワークスライダーを夢見てきた、断る理由は何も無かった。一つの事を除いては・・・
「何を考えている」
 蓮の声でふと我に返る。
「おまえの言う通りだ、俺は昔から単なる馬鹿だよ」
 真剣に俺を見つめる蓮に手を上げ、F355に乗り込む。
「八久和から帰ったら話す、どうするかも決める」
 走り出そうとするF355の前に蓮が立ち塞がる。
「まだ、話は終わってない」
「俺の話は終わった」
「おまえは一人で考え、一人で決めて、一人で動く、昔からそうだ」
「今も、これからも、変らんよ」
「この件に関してだけはだめだ」
「おまえには関係ないことだ」
「俺の整備したマシンをいたずらされ、しかもおまえは怪我をした、関係ないはずは無いだろ」
「関係ないね、俺が怪我しようと死のうとおまえには関係ない、おまえは俺に金で雇われて完璧な仕事をした、それだけだ」
ホイルスピンをさせF355は向きを変える。
 全開で県道を抜け、国道に出る。信号で止まっていると、エリーゼがミラーに映る。
 何処まで行っても、蓮がついてくる。
「しつこいぞ」
「俺の話は終わっていない」
「何処まで、付いて来るんだ」
「ベットの中まで」
 蓮が本気になったときのその、しつこさは半端ではない。
 俺のメカニックになるときも最初、俺は断った。メカニック雇う金も無かったし、自分のマシンのメンテナンスは自分でやるものと決めていた。そのときも、
「金はいらない、とにかくマシンの面倒を見させてくれ」と一週間俺に付いて回った。
 あまりにもしつこい事に腹を立て、殴りまくった。
 にもかかわらず、次の日、玄関を開けると蓮が寝ていた。
「おはようございます、お願いします」
 と、言った蓮の顔は倍くらいになっていた。
 蓮が俺のメカニックになったのは、それから二週間後だった。
 その間俺は2㌔やせ、蓮は5㌔やせた。
 もう、あのしつこさはうんざりだった。
「わかった、夜一緒にメシでも食おう」
「8時におまえの家に行く、メシは俺が作る」
「遅くても8時半には帰る」
と、言って走り出す、ミラーの中で路地にケツを突っ込み方向を変えているエリーゼを見送る。
「あのしつこさは何も変っていない」
 口に出していた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

もしもボカロキャラが35歳だったら・・・4

閲覧数:91

投稿日:2011/08/24 21:26:50

文字数:1,596文字

カテゴリ:小説

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    ブラックダリア

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    パート4読ませて頂きました^^
    またまた蓮君がーーーーーっ!!
    しつこ過ぎwww
    顔が倍に…(O_o)WAO!!!
    想像しながら楽しく拝見致しました(^O^)
    次回も楽しみにしています(^-^)

    2011/08/25 15:31:25

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