その昔。

サンタクロースは、二人いました。白いサンタクロースと、黒いサンタクロース。

今と少し違っていて。

毎年のように、白いサンタクロースは良い子にプレゼントを届けに行き、黒いサンタクロースは悪い子に悪戯をしに行くのです。

そんなある日。

白いサンタクロースは黒いサンタクロースの悪戯がエスカレートする事に腹を立て、黒いサンタクロースを不意にも殺めてしまいました。

その返り血を浴びてからというもの。白いサンタクロースはその罪を拭うように、衣装はその時のまま真っ赤な状態ではあったものの、毎年の聖夜には世界中の子供たちのために、プレゼントを届けに各地へと出向いたのでした。

それから長い年月が過ぎると、私の価値は世界中から都合良くあしらわれた。だから私は、理由を持って存在する事にしたのだ。

世界中の子供たちにプレゼントを贈る理由は、子供たちから非難されたくないから。

プレゼントを入れるものを片っぽの靴下に指定したのは、贈り物そのものが大きすぎないように。

トナカイと共にしているのは、黒いサンタクロースが私に残してくれた贈り物だから。

わざわざ煙突から入る理由は、血塗られた赤い衣装を懺悔として黒く染めたいから。

白い髭を生やした老人を振る舞ってるのは、老いぼれな存在で満足してるから。

黒いサンタクロースは、悪戯する悪い子供たちを率先して威していた。

いや、実はそうじゃない、叱っていたんだ。悪い事を、悪い事だと教えていたんだ。

自分は子供の笑顔を見たいからとでしゃばって、お金を物に変えて、一時的な笑顔だけに満足していた。

欲しい物を貰って喜んでいる子供と、大切なものを傷つけて心に闇を落としている子供と、どっちを面倒みないといけないか。そんなの、一目瞭然なのに。

物欲に浮かれてる自分が情けない。心の闇を解決すべきサンタクロースが、今の世界にはきっと必要だというのに。

それなのに、そんな偉大であった黒いサンタクロースを、私なんかが容易に殺めてしまったんだ。

今の世界に、必要な。

自分ではない方の、サンタクロースを。

サンタクロースという呼び名には、一つの魔法がかかっている。

皆の知らない、サンタクロースの正体は。並べ替えてみると、実はサターン・クロスって意味なんだ。

そう、悪魔の十字架って意味。

サンタは元々、黒い姿だったんだ。

十字架を首から下げた黒い老人が、皆の知らない、真のサンタクロースなんだ。

悪い子供たちを怖がらせるために、世界中を飛び回っていたサンタクロース。

その理由は、世界中に溢れた争いを取り除くため。

そんな事を知らないでいた自分が黒いサンタクロースの想いを自ら断ち切り、赤く染まった衣装をこうして身に包みながら、子供たちにプレゼントを届けるために今も世界中を飛び回っているんだ。

私自身が、真の悪だというのに。

メリークリスマス。

クリスマスは、キリストの誕生日とされている日。

そんな日を今の時代の人は大して祝う事なく、都合の良い解釈を以て、表向きな祝い事と装って、個人の愉しみ事としている。

そんな不自然なハッピーに歓喜し心躍れる今の人という存在もまた、きっとどうかしてるというのに。

今の私みたいに、ね。

その罪を永遠に慰めきれずに、きっとどうかしてしまってるんだ。

呆れるくらい普遍で、不自然なばかりに。

不自然で止まない赤いサンタクロースを、もっともっと不自然に感じてほしい。

どうしてこんな姿で、こんな事を続けているのか、を。

私は今やもう、皆の都合の良いだけの存在。

この世界に私はもう、不要だというのに。

良い子だけに与えられる、それがクリスマスプレゼントの決まり。

悪い子には悪くないよって、本当なら叱ってあげなきゃいけないのに。

それが出来ない、現代のサンタクロース。

与えられるもの全てが、喜びなんかじゃない。

与えられない事もまた、時に必要なんだ。

与えられる事に当たり前になってる、この現代の世には、特にね。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

クロースサンタ

閲覧数:73

投稿日:2016/05/26 22:47:33

文字数:1,685文字

カテゴリ:小説

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