夢を見た。その内容は詳しくは覚えていないが、とても悲しい―ある意味恐い夢だった事だけは覚えている。
ふあ、と欠伸を一つしてホワイトは手早く寝袋を畳み始める。夢の事は夢の事だ。忘れてしまえば良い。それにお誂え向きに夢の内容は余り覚えていない。このまま忘れてしまえば良い――――・・・ そう思いながらホワイトは寝袋を鞄の中に仕舞い、支度を終えると再び旅の続きに出ようと歩を進めた。が、直ぐにその足はピタリと止まった。
「あ、ホワイトじゃん」
こんな所で野宿だったのか? そう聞こうとブラックは口を開いたが、その声は え、と言う驚きの声になってしまった。
ポロポロ、ポロポロ。
ホワイトの瞳から大粒の涙が零れていた。真珠と見紛う様な、大粒の涙が。
「お、おい・・・。ホワイト、何があった? 何かされたか?」
少し慌てた様子で、しかし柔らかい優しい口調でそう問い掛けてくるブラックの言葉にホワイトは涙を己の手で拭いながらも首を横に振った。
「・・・っ、め、見た・・・」
「ん? 今何つった? もう一回」
聞き取れず再び問い掛けてくるブラックの方を涙目で見据えながら、ホワイトは言った。
「めっ・・・、ゆめ、みたの・・・! その、ないよ、う、思い出したの・・・!」
そう言ったホワイトの身体は微かに震えていて、直ぐにブラックは恐い夢を見たのだろうと直感した。
「で、その夢の内容って?」
ブラックがそう問い掛けると カァ、とホワイトの頬が赤く染まる。が、ブラックは其れに気付かない。どうも涙のほうに目がいっている様だ。其れは幸か不幸か。
「・・・・・・・・・・・・が、・・・・・・・・・の事、忘れる夢・・・・・・・・・」
「え、誰が誰の事忘れる夢?」
聞き取れない箇所があり、ブラックが再度問い掛けるとホワイトはあらかさまに顔を赤らめ、先程の弱々しい態度とは一転、何時もの態度に戻ると、
「べっ・・・、別に誰だって良いでしょ・・・!」
そう言うとブラックを押し退け歩き出した。
歩きながらホワイトは己の口元を自らの手の平で覆う。
(・・・、言える訳無いじゃない・・・)
夢の内容をはっきりと思い出したホワイトは更に顔を赤らめた。
(――ブラックがあたしの事を忘れちゃった夢、なんてさ)
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