* ミク -The Princess of Vampire-

「……姫。」
呼びかけにミク首をめぐらす。ひどくけだるげな所作だった。
唇には滴る赤。余韻を楽しむかのように、その血を舐め取る。
その細い首には、血の止まらない咬み跡。
瞳は緋。ミクは収まることを知らない欲望に支配されていた。
それでもしっかりとした理性を見せながら、ミクは声の主を認めた。
「ルカ。」
声の主・ルカは困惑していた。
「フォルゾナスが姫、フュトラスよ。貴女はいったい何を、」
「ミク、だよ。ルカ姉さん。」
ミクが遮る。
姉。その言葉にルカは微かに動揺する。しかし何事もなかったようにルカは続けた。
「あれほど、眷属をつくるのを嫌がっていらしたのに。『レン』をわざわざ眷属にされたのですね。」
ミクはゆっくりと首肯する。
「フュト……ミク。貴女はいったい、何をしようとしているのです。
望みは……遠い昔、叶えると誓った『望み』は、あのレンではないというのですか。」
赤い瞳。ヴァンパイアの欲望の証。
ミクが目を伏せると、彼女の赤い瞳は長い睫に隠される。
「違わないよ。あの『レン』こそ、『望み』の通りの存在。」
「でしたら、」
「ココから先は、」
逡巡。それでも覚悟を決めたのか、ミクは密やかに言葉を紡ぐ。
「あの子の、願ったこと。」
「『あの子』?」
困惑するルカに、ミクは抱きつく。
痛々しい表情。その瞳に涙すらうかべて、ミクは従姉に縋りついた。
「かわいそうな、ヴァンピーロ」
ハッとするルカ。自身も苦しげな表情で、泣きじゃくる従妹をそっと抱きしめた。

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ある吸血鬼の孤独について。 第2章5 ミク -The Princess of Vampire-

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投稿日:2012/05/27 14:11:50

文字数:669文字

カテゴリ:小説

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