A
今宵　恋月花に風

天の叢雲
　八岐の尾より出でし刻

B
祈祷連歌で奉られや
　そなた御仁と括りて候

S
菊の甘露に酔うほどに　雅な美酒を口うつし
　あな、此処ぞ秋津よ　八雲立つ八州
菊理が媛ぞ臨せれ


A
頬に雨垂れ　紅染めて

待てど暮らせど
　恋に障りは憑き物と

B
比翼連理の理知れて
　羽根も小枝も括りて候

S
絹の朱糸結びつけ　違わず小指探しつつ
　あな、我ぞ恋姫　袖触らせ契れ
想いは秘めじ　菊理媛



S
菊の甘露に酔うほどに　雅な美酒を口うつし
　あな、此処ぞ秋津よ八雲 立つ八州
菊理が媛ぞ臨せれ


・現代語訳・
今宵は恋の月、花には風がつらくあたる
（月を隠す）叢雲が八岐大蛇の尾から立ち込めたとしても
私を祈り奉れば貴女を想い人と一緒にしてあげよう
菊の甘い蜜に酔うように　美酒を口うつしして
あぁ、ここは日本、八雲立つ全ての島に
（恋愛成就の女神）菊理媛のおいでまし

頬は涙の雨にぬれた（美しくなろうと）紅で染めつけていたのに
どんなに時が流れても恋に障害はつきもの
比翼連理（仲睦まじい男女）という言葉のとおり
二羽の翼も咥えた小枝も括ってしまいましょう
絹の朱い糸を結び付けて正しい小指を探し当てる
あぁ、私こそが恋の女神（他人同士を）袖を触れさせて出逢わせる
想いなど秘めないで、この菊理媛の前では