私達は急に部屋に集められた。理由も良く判らず各々が顔を見合わせて不思議そうな顔をしている。

「頼流さん、急に呼び出すなんてどうしたの?」
「眠い…。」
「済まない…だけどどうしても聞いて欲しい事があるんだ。聖螺、レイ、ゼロ、鈴々。」
「どうしたの?顔色悪いよ…?」

深刻そうな面持ちに心配そうな顔のレイさんが頼流さんの顔を覗き込んだ。それに応える様に頷くとまた私達に向き直って言った。

「…俺達は記憶を改竄されてる…言魂で。」
「え…?」

意外過ぎる言葉に私達は何も言えないで居たが、眉間にコツリと何かが当たった。

「芽結…?!止せ!お前は暴走して…!」
「嘘じゃない…お願い信じて下さい!忘れているんです…流船を…大事な事を…私達
 忘れさせられているんです!」

今にも泣きそうな顔だった。ゼロさんから芽結が暴走したって話を聞いた時は驚いた。何時だって真っ直ぐで一生懸命に頑張っていた子なのは良く知ってたから。震える銃口をそっと握ると目を見て言った。

「判った…私、芽結を信じる。頼流さんを信じる。」
「鈴々…さん…。」

『ありがとう』と聞こえるのと、言魂が撃たれるのはほぼ同時だった。一瞬目の前が真っ白になったと思うと、目まぐるしい記憶が波みたいに押し寄せた。

『言魂…?』
『ねぇねぇ、何かさ、私達魔法使いみたいだね。』
『どうしてこんな所に閉じ込められるの…?!もう嫌…家に帰りたいよ!』
『逃げろ鈴々…!』
『その時私…言魂が万能じゃないって思い知ったんです。』
『俺なんかより、あの流船って奴の方が重傷なんだ!』
『クロアさんが貴方を逃がしたんですよ。』
『芽結ちゃんってさ、あの流船君と付き合ってるの?』
『そっかーデートなんだね、このこのぉ~おめかししちゃって!』
『暴走…?芽結が?』
『そんな冗談言うなんてさ、あの子酷いんじゃない?』

まだぐるぐるしている頭を軽く支えながら立ち上がった。見ると他の皆も頭を抑えて驚いた様な複雑そうな表情を浮かべている。

「マジかよ…。」
「何だってこんな事されなきゃいけないの?『脚本』とか…人権侵害だわ。」
「取り敢えず幾徒に話を聞いた方が良いだろうな。」
「大丈夫なの?下手したら返り討ちに…。」
「適任者が居るじゃない。お姫様に守られた王子様が。」
「…え…?」

みんなの視線が一斉に一人に向けられた。

「頑張れ、王子様。」
「…お前等が王子様って言うな。」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
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コトダマシ-65.適任者-

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投稿日:2010/12/06 03:36:53

文字数:1,022文字

カテゴリ:小説

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