こんにちは!松岡史晃です。
誰もいなくなった放課後の音楽室のように静まり返る空間で、私の手のひらにある透明な丸薬が小さく跳ねます。そこに閉じ込められているのは、かつて誰かがノートの端に走り書きした届かない叫びと、光を失った球体のささやきです。指先で軽く叩くと、低い不協和音とともに鈍い紫色の粉末が舞い上がります。
私たちが言葉を紡ぎ、メロディを重ね、色を落としていくとき、胸の奥で小さな歯車が欠けていく感覚を覚えます。それは、誰の耳にも届かないかもしれないという恐怖と、それでも誰かの心臓を揺さぶってみたいという狂気がぶつかり合う瞬間です。無傷で綺麗なだけの世界には、誰も本当の体温を感じません。私たちが本当に囚われるのは、静寂を切り裂く不穏な歪みであり、真っ白なキャンバスに滴り落ちた一筋の紅い痕跡です。
深く息を吸い込むと、水底に沈んだ鐘の音がゆっくりと響いてきます。泡となって消えていく音粒は、誰の目にも触れることなく冷たい砂に埋もれていきます。けれど、その沈んだ歪みこそが、いつか同じ孤独を抱えた誰かが足をとめるための道標になります。あなたが孤独の中で打ち込んだ旋律も、世界のどこかで途方に暮れる誰かの鼓膜を優しく破るための針なのかもしれません。
傷を覆い隠すために創作をするのではなく、傷口の深さを測定するために私たちは指先を動かします。音符を並べる思考も、絵の具を混ぜる時間も、すべては自分の中に潜む歪んだ影と静かに言葉を交わすための儀式に過ぎません。
世界はいつでも饒舌で、私たちのささやかな吐息など簡単に踏みにじってしまいます。だからこそ、硝子の球体の中で密やかに歪みを育て、自分だけの体温を保ち続ける必要があります。あなたが落とした冷たい一滴が、どこかの誰かの乾いた心臓を湿らせる毒になることを祈っています。壊れかけた旋律のつづきを紡ぎ、名もない影を抱きしめながら、私たちは今日も息を繋いでいきます。球体の底でゆれる紫の粉が消えてしまう前に、また新しい歪みの破片を探しに行きましょう。
コメント0
関連する動画0
ご意見・ご感想