このとき、イチゴウは体内から湧き出る力を感じ取っていた。
 素晴らしいものだと思っていた。
 しかし――それは、素晴らしすぎた。




≪マダラカルト 第伍話【自己解釈・最終話】≫




 イチゴウは拘束具を噛み砕き、施設から脱走した。その光景をニゴウも見ていたが、一瞬の出来事で何もできなかった。

「……総員退避!! 強化マダラカルトが脱走した!!」

 そのアナウンスを聞いて、ニゴウはたまらず駆け出した。

「待て!! ニゴウ、今の君ではあいつには適わない!!」

 科学者の言葉を聞くこともないまま。








 イチゴウ

 話すのは出来ない。今や、呻き声しか出すこともできない。

 ニゴウ

 泣いて駆け出し、イチゴウを止めようとするも、適わない。
 彼女の力だけでは――イチゴウを止められない。

「――これでどうだ!!」

 ニゴウは不意にあるものを取り出した。
 それはイチゴウがよく使っていたギターだった。
 それを持ってニゴウはイチゴウに思い切り叩きつけた。ギターは破壊されたが――イチゴウの動きは停止した。
 イチゴウは――泣いていた。
 そしてニゴウも泣いていた。
 立ち上がり、ニゴウは手を差しのべる。
 そして、言った。


「もう一人なんかじゃない」

 と。






 『極東帝国』の目論んだ、強化マダラカルト実験は施設の破損もあったが、成功した。
 以後、『極東帝国』と『第九帝国』長い戦争を再び続けていくこととなっていくのだった。








おわり。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

マダラカルト 第伍話【自己解釈】

終わりました。第四話は消しましたので、こちらがほんとの最後です。

本家:http://www.nicovideo.jp/watch/sm17754841

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投稿日:2012/09/08 19:27:28

文字数:660文字

カテゴリ:小説

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