二人の敵を目前にして、再び無線機のアラームが鳴った。
 『タイトさん・・・。』
 「分かってる。俺のいる場所から十メートル前方に、敵兵二名。アサルトライフルFY-71とハンドガンで武装している。」
 『迂回できるルートは?』
 「いや・・・・・・両側の岩肌で道を狭まれている。どうやらあの敵兵をどうにかしないことには、進むことは出来ないだろう。しかし、二人とも互いの死角をカバーしているようで、なかなか隙を見せない。」
 敵兵二人を挟む岩肌の間隔は、およそ八メートル。岩肌が続いている長さは、木や雑草が視界を阻み上手く確認できない。
 『タイトさん。彼らの目を欺く方法なら、二つあります。一つ目は、物音を立てて、そこに彼らの注意を引くのです。敵が音の原因を確認している間に、後ろを抜けてください。二つ目は、木や雑草の中に実を隠し、存在を悟られぬよう横を通り抜けてください。』
 「それもそうだが、折角のボルトガンは使わないのか。」
 『タイトさん!』
 急に大佐の口調が険しくなった。
 俺は何か気に障ることでも言ったのだろうか。
 『この作戦は全て隠密行動だということを忘れないでください。いいですか、貴方は単身で敵の領地へ飛び込み、僅かな装備で、無線によるアドバイス以外はろくなバックアップもありません。そんな状況で敵と戦闘にでもなれば一貫の終わりです。ですから貴方は、極力戦闘を避けなければいけません。よろしいですね。絶対に戦闘は避けてください。そのボルトガンは、どうしてもやむを得ない場合のみ使ってください。決して乱用はしないように!それと、もし貴方が任務を失敗して、捕虜や行方不明になっても、こちらから救援を出すことは一切ありません。作戦終了予定時刻の午前零時五分にリカバリーポイントからフルトン回収システムで輸送機に乗り込めなかったらアウトなのです。ですから、安全重視で、極力戦闘は避け、無事に帰還してください。』
 「無論、そのつもりだ。」
 『貴方に何かあったら、どれだけの人が悲しむというのです。』
 そうだ・・・・・・。
 俺には、待たせている人がいる。
 恩人であるあの人・・・・・・仲間であるあの人・・・・・・愛人である、彼女。
 そのためにも、俺は是が非でも生きて帰るのだ。
 「分かった。命令通り、行動を開始する。」
 『慎重に・・・・・・。』
 無線を終了した俺は、改めて身を隠していた木から顔を覗かせ、二人の敵兵の姿を確認した。
 彼らは丁度、こちらに背を向けている。チャンスだ。
 俺は目的地の方向に向けて、木から木へと移動し、体を隠した。
 音を出さないように、慎重に。
 そして、遂に二人の横を通り過ぎた。
 よし・・・・・・うまく行った・・・・・・。
 「ん?」
 そのとき、兵士の一人が疑問の声を上げた。 
 「今、何かが・・・・・・?」
 興国語でそう言うのが聞こえた。
 まずい、気配を悟られたようだ。
 敵兵の草を掻き分ける音が、次第に接近して来るのが分かった。
 くそ・・・・・・どうすれば・・・・・・!
 これしかない。
 俺は音を出さないように、手に手ごろな大きさの石をつかむと、敵兵の進む逆方向へと投げつけた。
 雑草に向かって着地した石は、がさがさと音を立て、丁度動物が動いたような音を立てた。
 「何だ?」 
 敵兵は踵を返し、音の方向へ向かった。
 大佐の言っていた通りだ。
 「どうかしたのか?」
 「いや、今そこに何か動く影を見つけたと思ったら、今度は向こう側で何かが動く音がして・・・・・・。」
 「どうせ野生動物だろう。」
 「そうだな・・・・・・。」
 そんな会話を背で聞くと、俺は目的地の方向へと突き進んでいった。
 岩肌に挟まれた道を抜けると、比較的広い道へと出た。
 辺りに気を配りながら、ライトで道を照らすと、そこには車の通った形跡が見られた。しかもそれは、トラックのような大型車のものと思われるほどの大きさだ。 
 どうやら当たりのようだ。
 この道を辿れば、核発射施設へとたどり着くはずだ。 
 俺は再度周辺を見渡した。
 先程の敵兵を見たところ、銃にフラッシュライトを装着することで視界を確保している。
 つまり、遠くからでも敵の存在を知ることができるということだ。
 ここから見える範囲では、あの蒼白い光は確認できない。
 見上げると、闇に包まれるかと思っていた空は、そこに浮かぶ月によって照らされ、森に蒼白い光をもたらしていた。
 不気味なその光は、頭上の木の葉覆う木々から差込み、俺の顔をも照らしている。
 ・・・・・・嫌な予感がする。
 早く事を進めなければ。
 俺はその道を走り出した。
 誰もいないとなれば、やるべきことは決まっている。
 しかし、いつでも敵に遭遇しても迅速な行動が出来るように注意は怠らない。
 走り進むうちに、遥か遠くにあのフラッシュライトの光が薄っすらと見えたが、まさかここまで見えることは無いだろうと思い、そのまま走り続けた。
 すると突然、俺の目の前で、森は途切れていた。 
 そして、途切れた森の先には、灰色の道が一本数十メートルほど伸びている。
 その道の上には、フラッシュライトの光が二つほどあり、そして、更にその先には、小さな建物が見える。
 俺は道から外れ、雑草に身をかがめると、双眼鏡を灰色の道へと向け、覗いた。
 その灰色の道は、橋だった。
 コンクリートの橋が数十メートル。幅は五メートルほど。
 その下には、幅の広い小川が流れている。 
 橋の上にいる見張りは二名。どちらもアサルトライフルで武装している。
 橋の向こう側には、橋を渡りきった車両をチェックするセキュリティーチェックが見え、その中に兵士一人の顔が見える。
 ここは流石に、先程のように上手くはいかないようだ。
 しかし、だからといって無闇にボルトガンを発砲するわけにはいかない。
 発射音の大きさははまだ分からないが、この人数ではサプレッサーつきの銃でも感付かれてしまう。
 道幅はおよそ五メートル。身を隠す場所が無い。
 どうしたらいい・・・・・・。
 どうしたら・・・・・・。 
 俺は、今度は自ら無線を開始していた。 

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

SUCCESSOR’s OF JIHAD 第三話「河」

なぁ~んか文字数が少ない。
少なくとも三千字は行きたいところです。
つぅかホラ、アレ。
ブラウザ時々凍っちゃうのよねぇ。


「FY-71」【架空】
 2010年にアサルトライフルの傑作AK-47をベースにとし、興国軍が独自に改良を行った新型アサルトライフル。
 主な改良点は、操作性の向上、安定性の向上、発射機構の再設計による反動の軽減、各種アタッチメントの装備である。
 操作性では、従来のAKでは出来なかった片手でのマガジン交換が可能となった。
 マガジンキャッチのレバーをトリガーガード手前まで延長し、簡単に指が届くようになり、素早いマガジン交換も行えるようになった。
 また、従来と変わらないクルミ材を用いたグリップはグリッピングがしやすいよう改良された。しかし右利きに特化した形状のため、軍では左利きの者も右利きに矯正するように訓練している。
 セレクターレバーは小型化され、レバー以外は内部に収納された。両側から操作が可能である。
 安定性は、部品数をAKより減らし、剛性の高いものを使用することで、極地でも安定した作動が確認されている。構造の単純化によりジャミングはほぼ起こらず、完全分解も簡単になった。
 発射機構は完全に再設計されており、弾丸の発射時に、反動がストックで分散するよう設計されている。これによって、使用弾薬の7.62mm×39弾でも、反動の軽減に成功した。 
 専用の各種オプションが同時に開発され、それを無加工で素早く装着することも出来る。 
 レシーバー上部とバレル下部にマウントレールを装備し、専用に設計されたドットサイト、スコープなどを装着できる。
 マズルはフラッシュハイダーを外し、ねじ込み式のサプレッサーを装着できる。
 M4やMP5などのR.I.S(Rail Interface System)からヒントを得たといわれている。
 これらの大幅な改良を加えたにも関わらずコストの増大は最小限にとどめられている。製造もプレス加工といった従来と変わらない生産方法である。 
 また、AKと操作方法、フィールドストリッピングの方法が全く同じなため、兵士に再訓練を施す必要が無いことも効率が非常によい。 
 これらの利点から、後に各国の軍で採用される予定である。
 なお、空挺部隊向けの短小モデルが開発中である。

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投稿日:2009/05/18 22:47:38

文字数:2,568文字

カテゴリ:小説

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