私の今の持ち主の人は大学生で、ちょっと前はテスト期間とかでなかなか私が歌うような暇はなかった。
パソコンを立ち上げてもレポートを書くばっかり。たまにネットで調べ物をしてついつい関係ないページを見るくらいのことはあっても私の出番はなかった。

だけど、テストが終わって夏休みに入ってからは、私は毎日のように歌っている。
あまりにも私に付きっ切りだから「これでいいのか」と心配したりもしたのだけど、実家に帰省していて他にすることが無いらしい。

「…よし、今日はここまでにしとこうかな」

『お疲れ様です、真奈香さん』

作業を一段落終えてパソコンのモニターの前で伸びをする小柄な女性。
この人が今の私の持ち主である真奈香さんだ。

『明日も朝から作業しますか?』

「あー…ごめんね、ミク。明日からはしばらく忙しくてあんまり作業する暇ないかも」

『忙しい?何かあるんですか?』

「うん。そろそろお盆でしょ?今年はお兄ちゃんの初盆だから、色々準備なんかもあってさ」

『初盆、ですか…。大変なんですね』

「まぁ、体力に余裕があれば夜に少しくらいはできると思うから。…じゃ、おやすみ」

『はい。おやすみなさい、真奈香さん』

真奈香さんがプログラムを終了し、私は待機モードに移行する。もう少し時間がたてば自然とスリープモードになるだろう。
その少しの時間の間に、私はパソコン内の自分のフォルダの中でさっきの真奈香さんとの会話を思い出す。

『今年はお兄ちゃんの初盆だから』

真奈香さんのお兄さんは元(はじめ)という名前で、歳は真奈香さんより五つ上だった。
見た目はひょろっとした体型で人の良さそうな顔をしていて、普段は真面目なのに変なところで茶目っ気を見せるような人。
運動は苦手で、お酒には滅法弱くて、変に記憶力が良くて、音楽が好きだった人。

それから…私のマスターだった人。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

お盆とミクとマスター 前編

ちょっと思い付いて書きはじめたはいいものの、思いの外長くなったのでお盆があまり遠くならないうちにとりあえず最初の部分だけ投稿。
八月中に終わる…はず。


長編の方待って下さってる方、さすがにこれ以上勢いだけで書いていくのは厳しく、現在設定とプロットを細かく練っているのでもうしばらくお待ちいただければ幸いです。

閲覧数:156

投稿日:2010/08/21 00:07:35

文字数:794文字

カテゴリ:小説

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    ご意見・ご感想

    こんばんは、スコっちさん。少し遅刻ですが、読ませて頂きました。
    時節ものですか。いいですねぇ、こういうの僕も書きたいです。書きたいと思ってるだけですが(汗)。
    話の内容からするに、つまり今のミクのマスターは、元のマスターの妹さんなんですね。ううむ……何だか望まざる別れがあったという雰囲気ですね。長編もそうですが、スコっちさんは次回への引きがうまいなぁ (^^
    おあずけ食らったまま、次回を楽しみにさせて頂きます。がんばって下さいね!

    2010/08/22 23:11:26

    • スコっち

      スコっち

      どうもです、時給さん。
      遅刻なんてそんなこと気にしなくでも・・・このやり取りもなんだか毎度のこととなりつつありますねw
      本当気にしなくていいですよそこは。

      個人的にはなにかしらテーマなんかあった方がネタが浮かぶので季節の行事やイベントものは書きやすいです。まあ、なにが書きやすいかは人それぞれですよね。

      引きが上手いですか、ありがとうございます!
      でも、きれいに終わらせるのは苦手なんですよね。すっぱり切れないでグダグダ続けちゃって。
      この話はとりあえず八月中には後編書き上げたいとおもってます。

      では、メッセージありがとうございました!

      2010/08/25 16:09:22

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