その日はとても澄んだ青空だった。

「でも良かった…意識が戻って。」
「俺も死んだと思ったよ。」
「馬鹿!心配したんだから!」

一時は心肺停止だった幾徒さんもやっと話が出来る迄回復していた。まだ機械に繋がれたままではあったけど、それでも危機は脱したらしく、皆ホッとしていた。

「そう言えば…禊音さんは…?」
「以前行方不明だ…施設に居た奴等も何ら手掛かりはないな。」
「例の黒い男も見付からないし、釈然としないわよ。」

多分私も幾徒さんも、そして皆が忘れていたんだと思う。言魂の本当の恐ろしさを。

「何も騒動が起こらないのが不幸中の幸いかも知れないな。あの日以来文字化けも
 目撃情報がぱったり無くなっているし。」
「良い事ではあるんですかね?」
「静か過ぎる…って気もするのよね…。」

余りにも身近にあるから、余りにも無限だったから、余りにも軽かったから。

「で、芽結はそんなにお洒落して何処へ?」
「えっ…?!」
「幾徒、聞くだけ野暮よ。流船君とデートなのよねー?芽結ちゃん。」
「う…えっと…はい…。」
「甘酸っぱ!」

何が出来るのかなんて深く考えなかった、何が出来ないのかなんて思い知ったつもりだった。お母さんを助けられなかった事が悔しくて悲しくて、だから私は無意識に可能性を否定した。

「えーっと…西口から出た方が…あ、あった。」

『死ね』とか『殺す』とか言ってる人が多いから、私もふざけて言っていたから。本当にはそんな事出来ないし、しないだろうと言う妙な安心があったから。

「わわ…?!もう直ぐ12時になっちゃうよぉ…何処だろ…?」

それは根拠も何も無い思い込みに過ぎなかったのに。

「あ、居た!流船!」
「!」


『芽結!』



私を見付けた流船の笑顔と、落ちたペンダントだけが、そこに残った。

「え…?」

一体何が起こったのか、その時の私には判らなかった。

「流船…?」

ただ、流船が、私の目の前で消えた。

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コトダマシ-57.澄んだ青空-

友人に下書き見せて開口一番「悪魔!」と言われた

閲覧数:121

投稿日:2010/11/25 08:34:10

文字数:829文字

カテゴリ:小説

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    ご意見・ご感想

    誤字発見!
    心配停止→心肺停止ですぞ!

    2010/11/25 07:49:07

    • 安酉鵺

      安酉鵺

      吹いたwww Thanks

      2010/11/25 08:35:09

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