「迷わないで歩けたらなぁ。こう、スパッと道選んでさ。」
またそんなこと言ってる。楽しいかい?それ。
「選ばないで進めたら苦労しないのに。」
それじゃいつか飽きてしまうだろ。
「なんだよ、言いたいことあるなら言えよ。」
「相変わらず子供だね、カイト。」
「ちょ、ルキどういう意味だよそれ!?」
「言葉通りだよ。たった一本しか道がないなんてあり得ないって。」
そう、宝物は間違えて通った道にある。そしてそれは絶対将来必要だ。僕は自分が思うほど強くも弱くもないから、それを見逃したり、無くしたりしたくない。
「わーってるって。失敗するから面白い。何度も挑んでは敗れても、必ず昨日よりましに思える今日にする。だろ?」
そう言いながらシュート練習を再開する。蹴られたボールは綺麗にカーブを描き、ゴールの隅に吸い込まれる。その度にギャラリーが煩いのは最早小学生の頃からの恒例だ。
「分かってるなら言わないでくれよ。いちいち面倒臭い。」
そう言いながらコーナーに行き、カイトの練習も兼ねてセンタリングの練習を始める。僕は球威は無いがコントロールならカイトより上なので、昔から僕はアシスト役だった。しかし、僕はそれに不服は無い。勿論昔はカイトに対抗してフォワードを目指したこともあるが、元々視野が広く、結構冷静に物事を見れる性格であることもあり、最終的には長所を生かせるミッドフィルダーを目指すようになった。自分に合わないのに無理して奪い取っても、それはいつか奪い返されちゃうでしょう?しかし実際、この回り道は非常に役にたっている。アシストするのがカイトでなく違うフォワードでも、どこにパスをすればいいのかの判断が容易に出来る。おかげでチームからは重宝がられているし、指導役を頼まれることもしばしばあった。
「もう遅いわよー、いい加減帰りましょー!」
暫くして、二つの影が僕らを呼ぶ(声を出しているのは一人だが)。
ふと時計を見たら既に8時を過ぎていた。
「やべ、急ぐぞルキ。メイコに怒鳴られる!」
「咲音さんのご機嫌とりはカイトの役目だろ。僕を巻き込まないでくれよ。」
「ちょっ、俺を見捨てる気か!?」
片付け能力の低い友人は毎回僕より遅く、よく彼女のメイコに文句を言われている。しかしたまには違う言い方出来ないかな、流石に聞き飽きたよ、それ。
「ごめん、いつも待たせて。」
しかし僕も二人を待たせてしまっているのは変わらないので、勿論二人に謝る。
「ううん、大丈夫。見てるの好きだから。」
「ちょっとルカ、あんた優し過ぎよ。たまにはガツンと言いなさいよ。大体…」
…勿論これもいつものことだ。ルカは僕がスランプに陥り、かなり苦悩した時にカイト達同様色々助けてくれ、それがきっかけで付き合うことになった。後に、僕が彼女を好いてることを知っているカイトとルカが僕のことを好いてることを知っている咲音さん二人の差し金だと知って、暫く二人にからかわれたりしたが。
漸くカイトが追い付き、メイコの矛先が彼に移る。暫く夫婦漫才を鑑賞した後、僕とルカが呼び掛け、皆で帰宅する。
毎日同じような生活をしているが、僕らは皆そうは思っていない。必ず何かが昨日と違っている。どんなに綺麗事だろうとも、世迷言と呼ばれても、信じてるからだ。何もない場所まで伸ばした手には、何かが握られている筈だと。昨日まではがんじがらめに張り巡らされた決まり事と思っていても、明日になれば真逆のことに見えるかもしれない。だからこそ、僕らは決して変わらぬものを望み続け、その度に少しだけ届きそうな気がしてるんだ。それは僕らにしか描けない大事な僕らだけの轍。今日の僕らに選べるものはそれほど沢山は無いし、どんな選択をしても結局は一筋しか刻めないけど、その轍には間違いなどどこにもないのだろう。

さぁ、明日はどんな轍を残そうか?

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

轍を残し、また一歩

初投稿なのでテストも兼ねてパッと書けそうな物を一つ。ハヤシケイの良曲「Track」の自己解釈です。ルキ目線。3時間クオリティかつ文才が無いことは重々承知なので御鞭撻お願い申し上げます。

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投稿日:2013/01/25 01:04:59

文字数:1,585文字

カテゴリ:小説

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