青い草 第8話 【テルyour wold】

空は氷の解けて沈殿したオレンジジュースの
グラスのような橙色に染まり
窓から覗く木の枝や葉が黒いシルエットを作る。

時折、遠い空からカラスの鳴き声と
吹奏楽部の金管楽器を吹く音が交互に聴こえ
ちょと前衛的なアンサンブルのように響いた。

そんな中、保健室からは
おいおいと泣き続ける女生徒の声……。

「ンもう、大丈夫よ、メイコさん。もう直ぐ目が覚めるって」

「おえ~~~ん!おぇ~~~ん!わだちのぜいだ~~~」

メイコが号泣し叫び、ベットに横たわり気絶しているカイトの
傍で顔を真っ赤にして泣いている。
それを、やれやれと少し呆れた顔で眺めているのは
いつも麗しい顔立ちとナイスバディなセクシーボンバーである
巡音先生。

ものも見事にローリングソバットをメイコがカイトのみぞおちに
にキメてしまい哀れカイトは
「ぐふぅ!」と、腹の空気と一緒に一言発し
そのまま気絶してしまったのだ。

一度、空ろな意識で目が覚めたカイトなのだが
とっさにメイコが必要以上の腕力で抱きつき
また更にカイトの意識を遠ざけてしまい
「やれやれ」と
巡音先生はメイコを叱るよりも呆れてしまい、今の
顛末に繋がるワケである。

そんな時に保健室の扉からノックが聞こえた。

「は~~い、どうぞ」

巡音先生が声をかけると、扉が開き、男性教師が顔を出す。

「先生!、レン君が倒れたと聞きまして……」

キヨテル先生は、ずれたメガネを掛け直すと
深刻そうな顔をして保健室に入ってきた。

「あら!キヨテル先生。そうだったんですけど……
先ほど、目を覚まして元気に下校しましたよ。」

「ああ、そうですか……」

キヨテル先生は少しだけ声のトーンを下げた。

「ああ、先生!そんなに心配だったんですね。
ほんと、何も無くて良かったです。でも……」

「でも?」

巡音先生がベットを覆うカーテンを開けると
カイトの横たわるベットが現れた。

「なんとーーー!カイト君!どしたんですか!?」

「え、え、まあ、ちょっとワケがありまして
今度はカイト君が寝込んでます」

「ま、まさかの……ボーナスステージ……」

「はい?」
巡音先生は聞きなおしたが、キヨテル先生は
メガネをくいっ!と直しながら
「いえ、独り言です」と、言い放つ。

つかつかとベットまで歩み寄り、「どけろ」と
べそをかくメイコを押しのけて
ベットの脇の椅子に腰掛けた。

「ちょうどいいですわ、キヨテル先生。
私、職員室に行って書類を取ってきても良いですか?
大丈夫と思いますが、念のため教員が一人ついていた方が
よろしいですから……」

「はい、そういう事でしたら、どうぞ。
私が留守番してます」

「それじゃ、お願いします」と言って
巡音先生はサンダルをパタパタと鳴らして保健室を出た。

「ふぇぇぇ~~~ん」
メイコがポロポロと涙を流すのを見てキヨテル先生は
ちょっとキツめの視線を送り
「うるさいな、お前!少し黙ってなさい!」
と厳しい口調で言うと、メイコは「すんすん」と声を
殺して泣き続ける。


『ちぃ!、この女がいなければ、カイトきゅんと二人っきりなのに!
くそう、くそう!、くそう!……、まてよ
今、この女を何か理由をつけて追い出せば
なんと二人っきりになれるじゃないか!ようし……』
(*以上、キヨテル先生の思考)

「おい、メイコ。おまえの仮設生徒会室、電気つけっぱなしだったぞ。
教室使って無いなら早く消してこい」

教室の前なんて通って無い。電気がついてるかどうかも出鱈目だ。
しかし、メイコをこの場から離れさせるには良い案だった。

「すんすん……、はい、いま……消してきます。ぐす」

仮設生徒会室の電気が点いてなくても、誰か親切な
人が消灯してくれた、と言えばどうにでも言い訳は成り立つ。

そして、まんまとキヨテル先生の策にはまり
顔を赤く腫らし泣きながらメイコは保健室を出た。


・・・・・・・


キヨテル先生と気絶してベットに横たわるカイトの
二人っきりになった保健室。

窓から流れ込む吹奏楽部から練習中のドラム隊が響かせる
スネアロールが鳴り止まったと同時に

ゴクリと

唾を飲むキヨテル先生。

「う、う~~~ん」
うなされるカイト。

「いか~ん!!呼吸が辛そうだ!」

カイトの上に掛けられたタオルケットを上半身分だけ
めくり、シャツのボタンをひとつひとつ外していった。

「カイト君、今、はぁはぁ……楽に、……ゴクリ、してあげるよぅ……」

首元からひとつずつボタンを外すとウエストのベルトにたどり着く。

「はぁはぁ……、これも、外せば―――、もっと楽になるぞぉ~……」

カイトのベルトをシュルリと抜くと
シャツの裾をズボンから引きずり出し、シャツのボタンを全て外した。

胸元からはだけたのはインナーの白いTシャツ。

「そ、そうだよねっ! 素肌にYシャツじゃ……
まぶしすぎるよね!男子生徒としては健全んッ!むむむぅ!」

ピタリと手が止まり
キヨテルは少し考え、一人で、なにやら頷いた。

「これは、やはり……、心臓マッサージが必要かも!」

カイトのTシャツをソロソロとめくると
贅肉のついていない腹部の中央に小さな窪みを見つけ
キヨテルの鼻から血が流れ出してきた。

「ごふぅっ!お、お、お、おへそぉ……か、かわええぇ……」

カイトの腹部を見たキヨテル先生はシャツを戻し
枕もとのティッシュを一枚取り、形を整え鼻につめた。

「ふむ……、こ、これで、体制は整った。集中して看病して上げるぞ!
 カ・イ・ト……くん☆」

キヨテルが次に目を移したのは下半身。

「あああぁ、あああぁ……しまった!下半身のズボンの圧迫が血流を滞らせ
カイト君の呼吸を苦しめている可能性があるぞぉ……。
これは……、太ももマッサージで血液の流れを促進するしか
方法はないぞぉぉー。はぁはぁはぁ……」

下半身にかぶさっていたタオルケットを剥ぎ、カイトのズボンのホックと
ファスナーを緩め、ズボンの裾からズリズリっと引っ張っぱると
靴下を履いたままでパンツ一丁になった下半身が現れる。

コバルトブルーのボクサーブリーフと白い無地のソックスが
キヨテルの視界に広がり、折角、鼻につめたテッシュが
瞬く間に真っ赤に染まった。

「まってろよ!カイト君!今、気持ちよく……じゃなくて
楽にしてやるからな~~~」

そう言ってキヨテルは、カイトの両太ももを手の平で
わっさわっさと、もみほぐし始めた。
どうやら血行を促進してるようである。

青いブリーフを引っかからせている腰骨と下腹部を
凝視しながら手は次第に膝上から太もも中心へ
―――そして股関節部に近づいてゆく。

「ああぁぁ……、カイト君の……、帆立貝式古墳が……
マッサージをするこの指に
触れてしまいそうだぁぁぁ~~~!」

そして、ブリーフの”頂”を、鼻息が掛かるような近くから
あらゆる角度で眺める。

「こ、この古墳の中にはどんな朝顔形円筒ハニワが……
隠されているのかな~~~?ぐふふっ!」

まさに帆立貝式古墳と例えられる部位に如何わしい動きをする
指がウニウニと触れようとしたその時、カイトが呻き出した。

「う~~ん……、寒い……」

「はっ!、しまった!確かに下半身を露わにして、その上に
上半身もシャツをはだけさせたまま!すまん、カイト君!」

キヨテル先生は正気を取り戻したのか、タオルケットをカイトの
肩まで掛けて上げた。

「はぁ~~~……。危ない危ない。
教師として一線を越えてしまう所だったな」

もう既に超えてるとは思うのだが
キヨテルは自分の手の平をカイトのオデコに乗せて
熱を確かめ、平常である事が分かるとカイトの顔に掛かった髪を
横に流してよけてあげた。

長いまつげ、すっと伸びた鼻、引き締まった唇。
よく見ると端正な顔立ちをしているカイト。
そんな彼の顔を眺めているとキヨテルはまた良からぬ事を
考えそうになり、パンパンと両頬を自ら叩く。

「だめだぞ~、キヨテル!、気絶している生徒の唇に
【奥義・真空チュウチュウ】なんて考えちゃ、ダメダメだぁ!」

それがどんな奥義なのか?想像すら怖いのだが、キヨテルが
一人でジレンマしてる間にメイコと巡音先生が戻ってきた。

「すんすん……、先生、電気、消えてたよぉ……ぐすん」
メイコがぐすぐす言ってると

「はぁ~?お前が、トロトロしてるうちに誰かが消してくれたんだろうよ!
もう泣くな!これだから女子は……」

キヨテル先生は、本当に女子には容赦が無い。

「まぁまぁ、先生。でもカイト君、そろそろ目覚めてくれないと
外が暗くなっちゃうわね」

なんて巡音先生が窓の外を眺めると
夕日は沈み、夜の帳が少しづつ降りてきていた。

「う~~ん……、あれ?僕は一体……」

カイトが急に目覚め、体を起こしてキョロキョロと周りを見渡す。

「ああっ!カイトが気がついたよ!先生!」

メイコの顔がパーッっと明るくなり
その場にいた一同が胸を撫で下ろした。

「カイト、ごめんね……、私がとっさにあんな事しちゃって……」

メイコはカイトに頭を下げた。こんなこと初めてだなと
思ったが、メイコに頭を下げさせるのは気が引けるので
「もう大丈夫だよ」と言って笑って見せた。

「あはは……、おぼろげに覚えてるな~~、いやぁ……流石に効いたよ」

「ほんと!ごめん!、って、すごい汗かいてるよカイト!」

カイトの顔に汗が浮かんでいる。

「あ、ああ。なんか……、変な夢を見ちゃってさ。
体全身をナマコみたいなモノが這いずり回る夢でさ……
ううっ、思い出すのもおぞましい!」

カイトはブルブルと体を震わせた。

「こほん……、まぁ、無事でよかった」

キヨテル先生がボソリと呟き、ポケットからハンカチを差し出す。

カイトは受けとったハンカチで顔の汗を拭きとり
「汚したので洗って返します」というと
「いいから、そのまま返せよ、むしろそのままが……」
と、キヨテル先生はモゴモゴと最後の言葉を濁し
首をかしげるカイトからハンカチを奪い取り

「こほん」と、また咳払いをした。



・・・・・・・・・・・・



薄ら暗い住宅街を二人腕を組んで歩いてるカイトとメイコ。

「家まで送る」と、メイコが言い出したのだ。
遅くなるからいいよ、と断ったが頑固な彼女の性分
カイトの意見は却下される。


「私が、支えて上げる」と、メイコが申し出て
カイトの右腕に、するりと左腕を巻きつけた。

二人とも半袖なので素肌同士が触れ合う。

メイコの細くて柔らかな白い腕がとても華奢で
いつも生徒会を切り盛りしている豪腕生徒会長のイメージが
あるだけに、カイトは心の中で少し驚いた。

自分のすぐあご下には彼女の茶色くて柔らかな髪があって
柔らかな香り。すこし照れてるのか赤く染まった頬を見ていると
いつも彼女が傍にいるのは何故なんだろうと考え始めた。

自分でも自覚はあるが
その気持ちは、彼女も同じなのだろうか?

もしも……

もしも―――

そうであったらなら、『僕は……』。

きっと、いつも強気なくせに、涙もろくて
お節介で、そしてとびっきり優しい彼女を

宝物のように大事に出来ると
思うのであった。


【つづく】


ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

青い草 第8話

テルyour(ヘンタイ) wold 

今回はキヨテル先生のターンです。
少し、如何わしい比喩がありますがご容赦下さい。

こんなの書いて大丈夫か?私。

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閲覧数:253

投稿日:2012/03/11 14:27:00

文字数:4,698文字

カテゴリ:小説

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