「リヌちゃんは本当に可愛いわね~。」
「将来タレントとかなれるよ!絶対!」

小さい頃から可愛いと言われて育った。歌を歌うのが大好きで、ダンスも楽しくて、芸能界にスカウトされた時だって正直楽勝だと思ったの。だけど目の前に居る人達は本当に全然可愛くて、歌も上手いしダンスも私より綺麗で…。

「やめやめ!やり直し!リヌちゃんぼんやりしないで!本番迄日が無いんだよ!」
「は、はい…!」
「少し休憩。気が抜けてるんじゃない?」
「ごめんなさい…。」

何で?ちゃんと頑張ってるのに、練習だってしてるのにどうして上手く行かないの?凄くイライラする。ジュースを手に少し廊下を歩くと微かに歌声が聞こえて来た。この声…ユウ先輩…。

「OK。調子良いみたいだね。体力面もう少し頑張って貰わないと厳しいけど。」
「はい、ありがとうございます!」

ユウ先輩、凄い…。私なんて何回も注意されて、一杯ダメ出しされて、何回もやり直しだったのに…。才能のせい?それとも…先輩がBSだから?先輩がカナリアだから…?ズルイ…ズルイ!そんなの私じゃ勝てっこないよ!

「あ、リヌちゃん。」
「…ズルイ…。」
「え?」
「ユウ先輩はズルイ!歌が上手いのだって、可愛いって言われるのだって、先輩が
 BSだからじゃないんですか!本物のカナリアに…人間の私が勝てる訳無いじゃない
 ですか!ズルイ…ズルイよ化け物のクセに!」
「…っ!」

ハッとして口を塞いだが、もう遅かった。先輩は青ざめた顔で俯いたまま何も言わない。どうしよう…どうしよう、私、何て事言っちゃったんだろう…!

「…ごめんなさい…!」

先輩の顔を見れなくてそのまま走り出してしまった。最低だ、私…。あんなの完全に八つ当たりじゃない!上手く行かないからって嫉妬して…絶対傷付けた…軽蔑された…!もうヤダ、もうヤダ!もうヤダ!!

「もう…ヤダ…。」

膝の力がガクンと抜けてその場に崩れ落ちた。最低なのは私なのに涙が溢れて、私は座り込んだまま泣きじゃくってしまう。もう戻らないといけないけど、このまま戻れなかった。いっそこのまま何処かに逃げちゃいたい。全部捨てて逃げ出したい!


「…あ…れ…?」


微かに音が、音楽が耳に入って来た。ピアノの音だろうか…?でも何処から?少し気になったので目を擦りつつ立ち上がって、キョロキョロ辺りを見回した。ふと、非常口が半開きになっているのが目に付いた。音はその辺りから響いてる。非常口って事は…外から?でも何で外にピアノがあるの?疑問の嵐の中恐る恐る外を見てみた。…が、顔を出した瞬間いきなりドアの外に引っ張り出され手と口を押さえられた。

「誰だ!!」
「んぐっ…!?」

―――も、もしかして…強盗?!

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

BeastSyndrome -20.ズルイ心も私の心-

※次ページはネタバレ用の為今は見ない事をオススメします。

>アミルスさんへ
リヌちゃん再登場です。( ̄∀ ̄)ノ

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投稿日:2010/06/01 14:37:44

文字数:1,144文字

カテゴリ:小説

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