「繋がりって、誰が作るの?」
幼い君が、首を傾げ、答えを求めてきた。
ただ不思議だっただけだろう。
それに対し、神様がと言った方がいいのか、それとも、自分でと言う方がいいのか、私は迷った。
だけど、口からこぼれ落ちたのは、
「認めあえるように努力して作るんだよ」と私は言った。
君は、「そっか」と、少し俯いて、それから笑顔でこう答えた。
「じゃあ、母さんとかな!」
君には母と呼べる存在はいなかった。
姉である、ここにいる私よりも、君は、今亡き母を慕うのか。
少し淋しくて、だけど嬉しかった。
(母さんから、血を分け合って、生まれてきたんだ)
ヨシと髪を撫でると、私を見上げた君は、驚いて声をなくす。
「んっ?」
私は上擦った声だった。
「……あ」
私は顔を隠そうとしたが、私も君も動揺して、どうしたらいいかわからなかったんだ。
「ごめん。そんな意味じゃ……」
君に悪気はないのはわかるし、嬉しいのも本当、哀しいのも本当だった。
「姉ちゃんは当たり前の存在なんだよ! だからっ」
「……うん」
「だから、泣いちゃ駄目だよ」
だけど、ふたりして、もうわああって思いをぶつけあっていた。
「僕ね」
「うん」
ひとしきり伝え合って、傷つけあって、その後にあったのは、脱力感だった。
「大人になったら、姉ちゃんを支えたいんだ」
「……どうして?」
思わず言ってしまったけれど、それを取り消すこともできず、コクリと唾を飲む。
「姉ちゃんは置き去りにしないよね?」
「……」
当たり前だ。
そう言おうとしたけど、声にはならなかった。
お互いに沈黙して、目を合わせ、そむけて。
「だって置き去りは片思いじゃん」
「? かた? お」
どういう意味だろう。
問うように見つめると、照れたように目を背けた。
「僕たちは認めあえるように努力するんだよね?」
(傷ついても傷つけても、ちゃんと最後まで逃げ出さずに。家族だから)
言葉にしてくれたわけじゃなかったけど、そんな言葉の続きを想像した。
「だから、安心だから、僕は母さんを大事に思うんだよ」
そうだねって言いたいのに、声に出したら、また泣いてしまいそうで、震えることしかできなかった。
「一方通行はもう」
君の言葉に私は首を振り、精一杯の意思を、目をそらさないことで伝えた。
「声が届くかはわからない。声が返ってきたりしない。でも、母さんがいてくれた証が私たちだし、君だと思う」
「……仲直り、しよ」
安堵の息と共に、君はそう吐き出した。
「大好きだよ! 姉ちゃん」
(私もよ)
声になんかならない。
気恥ずかしくなって、君の髪をグシャグシャにしてやった。
「将来が楽しみだね。まったく」
「何それ」
きっと可愛い彼女を連れて、私を驚かせ、がっかりさせるんだ。
いい意味で。
「いいよ。もう。私たちはずっと、家族なんだから」
その夜、私たちの夢に母が現れ、こう言った。
「まだ若いんだから、楽しみなさいよ」
それがずっと今も胸に残っている。
私たちは、まだ先も生きていくんだ。
伝えあえるこの幸福を噛み締めながら。
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