「…っく……ふ…」
いつも彼と居たその場所には小さな泣き声が響いていた。
「…く…ちゃ…ん…一緒…好き…なのに」
その途切れ途切れのつぶやきはずっとずっと会いたかった彼のもの。
けれどとても悲しい叫びは今まで聞いたことがない程で。
普段はつい忘れてしまいそうになるけれど彼は私よりもずっと年下でそれでもあんな想いを隠して笑ってきたんだろうか…。
【小説】堕ちた天使と悪魔の囁き6
見つけたその背中に一歩踏み出したときその気配に気づいたのか彼がピクリと身を震わせる。
涙を拭うような仕草を見せた後ゆっくりと振り返る。
「…ミク、ちゃん」
眉を顰め呼ぶ彼に自分が歓迎されていない事を悟るが必死で勇気を奮い立たせる。
ここで私が諦めたらきっと終わってしまう。
…大丈夫。
別れたあの時とは違う。
今は好きって言ってくれたことを信じたい。
だって私が居ることに気づかなかったその時まで嘘を吐く必要なんてないはずだから。
「…レン君」
呼んで手を伸ばすと逃れるように一歩下がって避けられる。
それでも私が諦めないのを知ると小さく息を吐き目を伏せる。
あたたかい頬に触れても拒絶はなくその手を軽く包み込まれた。
「どうして来たの…」
「だって、会いたかったんだもの。私はレン君が…」
彼の指が唇に触れ言い掛けた言葉を遮られた。
「駄目だよ。言っただろう。僕は君なんて好きじゃない。要らないよ」
「…嘘つき。ならどうして泣いてたの。好きだなんて言って泣かないで…」
口には出してはいけないのならと大好きなんだって想いを込め彼を見つめる。
そう大好きなの。
すべてを忘れてしまえるくらい。
貴方だけを見てるのよ。
「…レン君」
「ミクちゃん…泣かないでよ」
「…え…?」
気づけば涙が溢れて止まらなくなっていた。
思わず目を伏せると優しい指先が頬に触れ涙を拭ってくれる。
顔を上げれば以前と同じ少し生意気そうで格好良くてそして優しい笑みを浮かべてた。
「…レン、君?」
「もう…仕方ないな、君って。せっかく僕から逃がしてあげようとしてたのに必死で向かってくるなんてさ。後戻りできない道に踏み込ませたくなんて無かったのに…」
「私は…!私はレン君と居られなくなる方が怖い。嫌よ…離れたくなんて…。貴方が大好きなの!」
バカだなぁ、ホント。
苦笑混じりのそんな声が聞こえたけど私は彼のあたたかい体温に包まれてホッと安堵の息を吐いた。
やっと彼の腕の中、当たり前だと思ってた私の居場所に戻って来ることが出来たんだと思っていたから。
彼の暗い瞳にこれっぽっちも気づかずに…。
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