「…良かった、いるね」
「…安田教授、どうされたんですか?」
数日後、安田研究室に姿を現した雅彦。研究室には成田と脇屋がいた。
「…二人とも、ちょっと相談に乗って欲しいんだ」
「安田教授がですか?」
意外そうに脇屋が聞き返す。
「うん、時間はあるかな?」
「…大丈夫だよな?」
「そうですね。今やっている話は後回しでも良いですし」
「…それじゃ、僕の部屋に来てくれないか?」
「…それで、相談というのは?」
雅彦が淹れてくれたコーヒーを飲みながら成田。二人の前には手軽につまめるお菓子がある。
「人間関係に関する話なんだ」
「…どうされたのですか?」
全く予想していなかった相談内容に驚く二人。
「…君たち位の年齢の人が悩んでいてね。年齢の近い二人なら良いアドバイスがもらえると思ったんだよ。僕はちょっと普通の人とは考え方が違うから、僕の考えだけだと参考にならないと思ってね」
神波の名前を出さずに相談したい内容を伝える雅彦。
「…人間関係というのは、具体的にどういったものですか?個人が特定されない範囲で良いのですが…」
成田が聞く。
「…例えば、自分とは相容れない考えの人が近くにいた時、二人ならどうする?」
雅彦の問いかけに、真剣な顔をする二人。
「相容れない、というのは、こちらが説得しても絶対に向こうが考えを変えないと考えて良いですか?」
「…そこまでじゃない。こちらが向こうの考えを変えることは可能だけど、労力に見合わない位の手間がかかる、という場合も含めて良い。逆方向も同様だね」
そういわれ、しばらく考える二人。
「…相手の説得がほぼ不可能で、こちらも同様であれば、そういう考えがあると思って受け入れるしかないですね」
「…受け入れるのは簡単かな?」
「…状況によると思います。受け入れるのが難しければ、無理せずに離れるというのも手ですが、近くにいるとなると、その手は使いにくいですね」
脇屋が話す。
「ちょっと二人に深入りして悪いのだけど、確か二人はミクのライブに行く行かないで意見が違うよね?そこはどうして折り合いをつけてる?今回の例に近いみたいだから二人に相談に乗ってもらったんだ。こたえたくないなら無理強いはしないけど…」
一瞬、二人が視線を会わせる。
「俺からすると、ライブに行かないという話は、すぐには信じられませんでしたが、ミクさんのファンだからこうあるべき、という考え方は好きではないので、俺は納得しました」
「…僕の場合、自分の意見と合う人の方が少なかったので、そういうものだと思っています。どうしても、という所は仕方ないですが、それ以外は無理はしないようにしてメリハリをつけて、負担を抑えてますね。人で負担の大小はあると思いますが、僕だけの話じゃないと思います」
二人の意見を聞いて、しばらく考える雅彦。
「…そうか、ありがとう。二人の意見を聞けて助かったよ。大したお礼はできないけど、そのお菓子は持って行って良いよ」
「…そうですか。それではいただいていきます」
そういって成田が二人に出されたお菓子を持つ。
『失礼しました』
「二人とも、すまなかったね」
そうして雅彦の部屋を出る二人だった。
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