「くりすーたるに、う・つ・る、私(わたし)の、はぁと~♪」
ふふーんと、歌を歌いながら足元を覗く。
校舎屋上、地上100メートル。
うんうん、この高さからだとさすがに地面は見えないかぁ。氷の結晶とかキラキラしてて綺麗だと思ったんだけど見えないや、残念。
今度は空を仰ぐ。
目に映るは青空で、広げた両手を駆け抜けていく風が気持ち良い。
よしよし、やっぱり高いところはいいなぁ、私は好きだよ。
……ぇ?聞いてない?
うん、話してないもの、
私の心の声だからいいじゃない、別に?
「……さて、次は図書館に行きますか」
どんな本を読みにいくの?って?
待て待て、待てぇーい!
そう決めつけない、決めつけなーい!
ただの気分転換で行くだけかもしれないよ?
なんたって今日は気分が悪い日なんだから。
身体を翻せば上着の裾が空を切る。
格好良い雰囲気は好きだけど重たいなぁこの制服は。
たたたーっと、階段に向かって走る。
『――――おめでとう、優秀な君に相応しい称号だ』
……脳裏をよぎったさっきの言葉は。
淡々とした賛辞は薄っぺらかったし、頭に付けられたバッチは少し煩わしかったけど、私の見た目を女の子らしく彩る位には、どうやらかわいいらしい。
同級生が「可愛いね~」って、キャッキャウフフしてくれたんだ。
うんうん、良いことだね。
私の言葉も聞かずに勝手に楽しそうでなにより、なにより。
「ぇ、その可愛い発言の対象は私?」って聞いたら変な顔されたけど、肯定ってことだよね?
それなら大歓迎だよー。
うんうん、私可愛いんだって!嬉しいよね、機嫌なーおった!
るんるんら~~んっ♪
螺旋階段を2階ほど下る。
突き当たり、左に曲がってすうめーとる。ぶらりと歩いてどこにいくー?
というわけで到着です。
さてさて、いきなりですが問題です。
ここはどこでしょう?っとね。
「あら、レウリィちゃん!いらっしゃーい!
まったく貴女はここが好きねぇ。
勉強よりも楽しいことすればいいのに?
学生時代はそんなに長くないのよー?」
扉を開けたその先に待ち構えていた人物に、よりにもよってこの人かと嘆きながら口を動かす。
「どーも、センセイ。
それはナンセンスな気がします~…
書物から学び楽しむこともたくさんあるのですよ。それはセンセイの方が詳しいですよね」
……あ、そうそう、ヒントはもう与えました。わっかるかなー?
「それじゃなきゃ司書なんてやらないわよ。
まったく手厳しいんだから、もうっ。
はい、貴女が前に探してた本よ。
それじゃ、ゆっくりして行ってね?」
用件を素早く終わらせて、手をヒラヒラ振って去っていったセンセイは正直少し苦手かもしれない。
仕事はできそうだけれど、つかめない人柄は厄介なんだよねぇ。
脱線してた、話を戻しましょ~。
正解は、図書館です。
本棚に囲まれた空間のすみっこ。
珍しく木材で作られている伝統の古椅子、指定席に腰かけて、両腕に収まりきらないそれを見つめる。
これまた古ぼけた、図鑑のようなその書物。
埃が積もった表紙は、払ってみても最早劣化していて読めない。
だけれど、私が読みたかった書物には間違いなかった。
内容は何かって?
今度旅行に行く先の予習を、ね。少しばかり。
簡潔に色分けされ、名称分けされている地図。
友好関係にある「器械の国」については、国名が大きく記載されている。流石に隣国のなかではよく栄えてる国なだけある。
気になるのは、「自然は罪」なんて赤字があること。字の様子から見るに、あとから書き込まれたような形跡だけれど。
他には歯車……?ていうか、騒がしい国?なんて言われてたっけ?そんな隣国についても数行そこそこ書いてある。
別に国にこだわりはないけれど、
「自然の国」、なんて揶揄されるあの国については最早記載さえないなぁ。
その先には、どんな国があるんだろう?
そして、どんか風景が広がっているんだろう?
知らない世界があることは常識だけど、実際に自分の目で見てみないとわからないもんね。
だから、さ。
その時、
柄にもなく、願っちゃったんだよね。
「"世界旅行に行ってきたまえ、レウリィくん"
……なーんて、ね。
そんな辞令がくればいいのになぁ。
世界一周旅行とか、ロマンがあるよね」
――――ちょびっとだけ「非日常」を、さ。
「ふふふ、よく似てる。
あの薄っぺらーい賛辞をしてきた学長のモノマネ……ふふふ」
悪口じゃないからね、
声帯模写は特技みたいなものだし。
「あ、そーだ、そーだ。
きーんこーんかーんこーん♪な時間が来るね、授業に行かなきゃだ」
空想のセカイもいいんだけれど、ぼちぼち授業に戻らなきゃだね、楽しみだし。
そんなことを口にしていたからだと思う。
席を立つ瞬間。
それまで、気づかなかったんだ。
その地図が、何かおかしいってことに。
あるいは、
私の声が、届いてしまっていたことに。
『――――汝、我を求める者なりて我が力の糧となろう』
閃光と声。
何が起こったか、とか理解する暇なんてなかった。
・・
気が付いたら、それは手元にあったんだよね。
「は、い……?」
声がうわずる。
い、いやいや。狼狽えはしないよ? だけど、これはその、あの?
「笑えない冗談だなぁ……これ、私、掴まっちゃうよ?」
必死にお道化てみてもだめだ。
だってここに在るはずないものが手元にあるのだもの。
――――クリスタル。
水晶でできた、国宝。
ゴツゴツとした感触とは裏腹にとても温かく澄んだ輝きを放つそれ。
手にした者は思わず息を飲む美しさ、なんて教科書には書いてたっけ。
何も理解できていない現状で、茫然としていたからだとは思う。
「レウリィちゃん、貴女が選ばれるなんてね」
背後からの声に、あるいはその存在に全く気付かなかった。
これが私にとってのすべての始まり。
後に、
「これで世界が救えるならやるしかないって思ったんだよねぇ」
なんて、言えるくらいになる私の物語の序章でした。
【レウリィ短編小説】「日常と非日常の始まり」
レウリィちゃん(https://piapro.jp/t/VGSC)
情報少しお借りして書いてみました。
基本心理描写メインで進めていくのが私のスタイルです。完全マイペースな子になりました。癖が強すぎたかな(^ω^;
この先はなにも考えてないです、えぇ、
地図なのか古い書物なのかわからんあれがどーなるかとか書きたいような、難しいような⬅️
近いうちにイリーナたんのも書きます。
よろしくお願いいたします\(^o^)/
8.1 内容一部追加。更新しました|ω・)
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