「このおうちにはこれ以上住んでられないわ」
これがあたしの出した答え。

あたしは重音ミサト。齢は15になったばかり。
2000年、8月真っ盛り。ここは、都会になんて縁もないド田舎。
やけに五月蠅い蝉の声に、青々とした森がそこらにあるような場所。
ビルもなければ、バスも滅多にこないし、
ロマンチックなデートといえば、一緒に裏山で星を眺めるくらい。


家に滅多に帰ってこないお父さん。綺麗な女の人と怪しいお店に入っていくのをこの前見た。
母さんはそれからずっと上の空で、まるでご飯だけ作るロボットみたいだわ。
お兄ちゃんも友達の家に泊まってばっかりで、いっつもどこかへ遊びまわってる。

遊び歩いてるお兄ちゃんも、きっとこんな気持ちだったのね。
ねぇ、ここに、あたしがいる意味、ある?


今日もお母さんは上の空で、ぼーっとテレビを見てる。
家を今にも飛び出そうとしてるあたしにすら気づかないくらい。
最後に挨拶くらいはしていこうかしら?
「じゃあお母さん、元気でね?」
ぼんやり顔をあげた。
「え、ミサト、どこ行くの?」
「さよならっっっっっ!!!!!!!!」
「えっ…ちょ、ミサトっ!?」

全財産と、ケータイと、お気に入りのワンピースやTシャツ、ツインドリルを結うためのゴム、それからリュックに入るだけのお菓子を持って、あたしは駅へと駆け出す。

少し遠くに銀色の髪を見つけた。
やばっ。隠れなきゃ…
「ミサトだねっ!?」
あぁ見つかった…
「テイ…」
テイはあたしの幼馴染で、銀色の長いストレートの髪が印象的な女の子。
真っ赤なぐるぐるツインドリルのあたしには、綺麗なテイの髪がうらやましかった。
「ミサトぉ、そんなおっきいリュックもってどこ行くのかなっ?かなっ?あ、もしかして家出とか?うふっ、楽しそう!行先はそこの裏山でしょ?うふふっ。あたしも行ったげよっか?ふふ」
…そしてかなり天然。
「…家出よ。東京に。」
「え?東京山なんてこの辺にあったけな?」
「東京都よっ!都会!!!山じゃなくて超都会の町よ!!!」
「…本気なのかな?」
「うん。」
テイがあたしの目を覗き込んでくる。
「行って何したいのかな?」
「誰かに、あたしを必要とされてみたいのよ。」
で、さらに望めるならば、…愛されたい。

「…本気みたいなのね?」
「ええ。」
「…
ミサト、いってらっしゃい。元気でいてほしいなぁ」
「…止めないの?」
びっくりだわ。正直、止められると思ってたんだけど…
「止めないんだよ」
「…行ってくるわね」
「いってらっしゃいなんだよ。たまにはメールとかしてくれると嬉しいんなぁ」
「わかった。じゃあね…?」

テイは、複雑な気持ちの時、ふっと大人びた表情をする。
今も、テイは何も答えないで、ただ私を見つめて微笑んでいた。
女の私でさえ見惚れてしまいそうなくらい綺麗な、でも少し悲しそうな笑顔で。


そして、あたしは、走り出す。

「1番線に列車がまいります、ご注意くださーい」

これから始まる、永い永い無限ループへ向かって。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

命短し恋せよ乙女~無限ループ1/5~

デスおはぎさんの、「命短し恋せよ乙女」を勝手に妄想し、小説を書いてみました。
自身初小説なので、乱文ご容赦ください<m(__)m>
テトちゃんはキメラなので年をとらない…ということはなく、とります。 (笑)ご注意ください。
テトちゃん嫁に欲しいっ!(;´Д`)ハアハア
2/5~も、書く予定です。

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投稿日:2013/07/28 12:09:20

文字数:1,273文字

カテゴリ:小説

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