「はぁ~……。」



 大きなため息をつきながら、僕はとぼとぼと歩いていた。

 今日もいつも通り、僕はみんなの嗤われ者だった。

 大学の講義では資料を忘れ。合唱のサークルでは何度も同じところで変な声を出して叱られ。

 挙句の果てに、こうして帰り道は雨に降られている。

 沈んだ気持ちで自分の手を見る。お気に入りの傘は雨風に吹っ飛ばされて、骨組みだけになってしまった。

 雨に濡れながら歩いていると、ふと足に違和感を感じた。何だろう?

 足元を見るとなんだか小汚い猫の足跡が靴に残っていた。

 見れば、灰色の猫がこちらを振り向いている。

 まるでその顔は―――



 『くくく……。憐れだな。ま、ご苦労様……。くっくっく……。』



 ―――――とでも言っているかのようだった。


 「……そりゃこんなんじゃ、猫にだって小馬鹿にされちゃうよなぁ…。」


 ますます気分の寂しくなった僕は、うつむきながら歩いていた。

 ふと顔を上げたその時。



 「……ん?」



 目に留まったのは、一軒の古びたPC関連店。風が吹けば倒れてしまいそうなぐらい小さな店だったが、雨風は凌げそうだ。

 僕はその店で暫く、雨宿りをすることにした。


 「おっ、いらっしゃー……ん!?あんちゃんずぶ濡れだねえ、傘はどうしたい?」

 「あはは……。ちょっと風で壊れちゃって…雨宿りさせてもらえません?」

 「おおいいよ!今タオル持ってきてやるからそこらに座ってな!」


 店主は親切にも、タオルとストーブ、ホットココアまで用意してくれた。他人の親切がこんなにも嬉しいのは、長らく人の心の温もりを受けたことがなかったからかもしれない。

 店主の用意してくれたホットココアを飲みながら、僕は店を見回した。置いてあるPCは旧式のものばかり、置いてあるソフトは20年以上のものばかり。

 これじゃ流行らないわけだ……。

 もっとも、今の僕には何を言う権利もない。僕みたいなガラクタ野郎に。半端者には、何を言う権利もないんだ。

 ため息をついて、僕はもう一度店内を見回した。その時、ふと一点に目が留まった。

 何気なく僕は立ちあがって、あるソフトの元まで近づいた。


 「……『VOCALOID』……『初音ミク』……?」


 呟いた僕に気付いた店主が話しかけてきた。


 「ああ、それかい?今ブームの初音ミクをうちも入荷してみたんだよ。少ない予算で一つだけ、そしてそれをなるべく外からも見えるように見やすいところに置いてね。ただ見ての通り、店の外見がぼろいから商品を見てくれる人もおらなんで、何度か買ってくれた人もいたんだが皆一様にして『変な声が聞こえる、怖いから返す』と言って返品してくるんだ。おかげで全然売れないんだよ。私も年だし、そろそろ店を畳もうかと思ってるんだが、どうしてもそれだけは売り払ってしまいたいものだよ……。」


 僕はぼんやりと店主の説明を聞いていた。だが大変失礼なことに、その時僕は店主の話なんか九割方どうでもよかった。

 ただ、魅かれていた。よくわからないけど、そして僕の手でこの店に引導を渡してしまうことになるかもしれないけど、僕はその場で即断した。



 「……おじさん。僕、これ買います。」

 「え……いいのかい!?さっきの説明聞いていただろう?いわくつきだよ、そのソフトは。」

 「いえ、それでもかまいません。ただ……なんとなく買ってみたくなりました。」


 店主は呆気にとられていたけど、「それならば」と少しだけ値下げして売ってくれた。

 本来より700円ほど安い15’000円。たったこれだけの出費で僕の財布は空っぽになってしまったが、何故だか余り後悔はしていなかった。

 店を出る時、店主は傘を渡しながら僕に笑いかけた。


 「いわくつきの初音ミクも売れたし、これで心残りなく店を畳むことができるよ。君の様な優しい青年が最後のお客でよかった。」


 その言葉に僕は胸が痛んだ。僕みたいな半端者が…優しい?


 「僕は…そんな優しくなんかないです。いつだって嗤われ者で…嫌われ者で…。」

 「…私にはそんな人間には見えんが、もしもそうなのだとすれば、君は君の優しさを生かし切れていないだけなのでは無いかな?優しさを生かす方法を見つければ、君は人気者にだってなれるさ。若いうちは、いろいろと無茶もしてみることも忘れずにね。…それでは。」


 店主は店の奥に引っ込んでいった。

 僕はソフトを握りしめ、傘を広げて家へと走って行った。
 

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【自己解釈式二次創作風小説】ODDS&ENDS~歌姫《ガラクタ》と僕《ガラクタ》の二重奏《デュエット》~①

えー、遅くなりましてすみませんwwwこんにちはTurndogです。
懐かしいわこのフレーズ…(ジーン)

大学生になるTurndog、新たなジャンルに挑戦です!
挑戦でODDS&ENDSを選ぶってのも挑戦過ぎるとは思うけどね…www

そしていつもの調子で改行したらなんだかとても変なことに。
……なおすのもめんどくさいからほっとく←
いろいろ言われたら直そっかな。


『―――なら、あたしの声を使えばいいよ』

閲覧数:264

投稿日:2013/02/28 23:17:10

文字数:1,918文字

カテゴリ:小説

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  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    この曲は、私どちらかというとテトちゃんのバージョンが好きなのです

    テトちゃんの背景ともかぶるあたりがいいなぁとw

    2013/03/04 23:37:18

  • イズミ草

    イズミ草

    ご意見・ご感想

    なるほどです……
    これからどうなるんでんかあ!!
    気になる……けど、寝ないとだし……。
    ああ、ジレンマー!!

    2013/03/01 21:17:44

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      とりあえず落ち着いてwww
      何だっぺ「でんかあ」って(お前もどおした

      睡眠は大切!
      だが最近私は寝ずに執筆して……はいませんwwww

      2013/03/01 21:35:30

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