第二十三章

日々の時間はあっという間に過ぎて行く中、病院へと行く日になっていた。
今日は火曜日、「悠さんにカットをお願いした日だ…」と何故だか心が躍る。
…どんな髪型にして貰おうか、なんて事を考えながら自分に似合いそうな髪型を探す。随分と長くなってしまった髪の毛を触りながら、「…いっそ、ボブにでもしようかな」と思い始めた。…悠さんと相談しながらでいっかな、とそう思い始め、私は軽くメイクをし始めた。兎に角今は病院の事に頭を持って行こう、そう思った私は薄いブラウンのメイクをし、身支度を整えた。少し早目に終わった支度に、彼の働く美容室の名前を入れ、検索し「ヨネクラユウ」の名前を探し始めた。素敵な笑顔の「米倉裕」を見付け、「悠さん、素敵だな」と小さく呟き、「米倉裕」を指名し時間帯は17時半に予約を取った。病院の日は大体憂鬱な事が多いが、1つ楽しみが出来た。「今日は美容室だ、楽しみ…ふふ」と私は笑顔迄出ている始末だった。さて、そろそろ病院に行こう、そう思いバッグに保険証やらメイクポーチやらを入れ、マンションの駐車場へと向かった。さて、一先ずは病院だ。向かうかな、とエンジンをかけ病院へと向かう事にした。病院へと着く頃、いつも以上に心躍る私は冷静を装うと、必死になっていた。
先生に悠さんの存在も伝えてみよう、そんな事を考えていた。病院の予約10分前には既に着いていた私は、診察券やら必要なものを受付で渡し、落ち着いた音楽の掛かる中、呼ばれるのを待っていた。「宮澤さん、お待たせしました、どうぞ」と診察室へと呼ばれる。先生は開口一番に、「宮澤さん、顔色が良いですね」そう言ってくれた。
それから、先生との会話は始まり私は悠さんの事や、毎日一緒に食事を採っている事を先生へと伝えた。「良い関係性になって居るのかもしれませんね」そう言って貰えた事が私は嬉しかった。相変わらずな薬ではあったものの、処方して貰い、2週間分の薬を受け取り、会計を済ませ病院を後にした。少し早目ではあったが、悠さんの勤める美容室へと向かう事にした。時刻は4時45分を廻る頃だった。…早目に来てしまった…悠さんに会いたかったのだと私は羞恥心を隠せなかった。…取り敢えず、煙草吸って落ち着こう、そう思い煙草を咥え火を点けた。ほんの少しばかりの緊張感を和らげるべく、煙草の煙をゆっくりと吐き出した。…職場での悠さんはどんな感じなんだろう…そんな事を考えながら吸う煙草が少しばかりの緊張を和らげてくれている様にも感じた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

深淵の中の蝶

閲覧数:61

投稿日:2025/02/21 22:36:04

文字数:1,049文字

カテゴリ:小説

クリップボードにコピーしました