S
あなた様 お願いごとが御座います
晴れの良き日に なんですけれど
ひとつだけ ただのひとつで御座います
私よりも 早くに死んで
A
出会いはいつか 夏の日に
騒がしい空と警報の下で
見合いと同時 決まりきった
あなた様という旦那様がいた
低温の夜を 過ぎたきり
姦しい旗と万歳の中で
清音の声で いってきます
旦那様は言う 見ず知らずのまま
B
まるで変わり映えのない 旦那様などいてもいなくても
共に起き伏した時間も 空に干せば薄れるばかり
S
旦那様 お願いごとが御座います
晴れの良き日に なんですけれど
ひとつだけ ただのひとつで御座います
私よりも 早くに死んで
A
再度はいつか 夏の日に
泣きそうな空と静寂の中で
最期を逃れ 怯えきった
旦那様というあなた様がいた
本当はここで 妻として
恋しいをもって喜びを伝え
心臓の鼓動 抱きしめて
あなた様に言う はずでしたのにね
B
まるで変わり映えはない 旦那様などいてもいなくても
けれど起き伏した夜が 背中越しにふくらむばかり
S
旦那様 お願いごとが御座います
晴れの良き日に なんですけれど
ひとつだけ ただのひとつで御座います
あなたよりも 早くに死んで
C
好き などという感情は
私たち互いの間にはなくて
嫌い などという感情も
同様に有り得ないものでした
では この沁みて仕方のない
感情は 傷みは 苦しさは なにか
ただ 質量を増した
喪失を噛み締めるだけでした
S
あなた様 お願いごとが御座います
S
あなた様 恐ろしいので御座います
空の鳥より 人の業より
一人だけ 取り残されるあの想いを
あなた様に 知らせることが
あなた様 お願いごとが御座います
晴れの良き日に なんですけれど
ひとつだけ ただのひとつで御座います
私よりも 早くに死んで
恋のない二人
出立前の一夜限りの結婚、その後が続いたらを考えて。
コメント0
関連動画0
ご意見・ご感想