夏空を描いた。青く、青く、ただ透き通っていた。
逃げ水を追ったキャンバスの上の、空っぽなエモ。
乱雑に敷いた飛行機雲も、
馬鹿みたいに煩い蝉の音も、
描けば描くほど遠のいていくのが不思議だった。
昼下がり。虚無。帰り道。間違い。
何かを失くしたような気になった。
気になっただけ。
僕はカメレオン、カメレオン。
生来知んない愛を描く。
夕立みたいな水彩画、何をどうやったって満たせない。
カメレオン、カメレオン。
空想だけの夏を作っている。
青に染まって描いている。
偽物を描いた夏の空はまあ、いつも通り。
キャンバスが並ぶアトリエに一人、彼女は来た。
「何をしてるの?」と彼女が問うた。
「絵を描くのさ」と僕は嘯いた。
描けば描くほど劣等感。水を掬ってまた彩って。
「私も描いて!」と彼女が言った。
「気が向いたらね」と適当に流して、
少し笑って、
笑って、
笑ってしまったから……。
僕はカメレオン、空っぽさ。
生涯知んない思い出だけ知りたいと描いた。
ちゃちな願望ばっか肥大した。
カメレオン、カメレオン。
どうやっても僕は僕だけど、
傷も、痛みさえ、美しいと思うから。
カメレオン、カメレオン、そうかい。
知った絶望を夕立みたいな滑稽画にして、どうかしちゃって笑いたい!
カメレオン、カメレオン。
空想だけの夏に染まっていた僕、僕、僕はカメレオン、カメレオンだ。
案外、ただ虚しくて、
案外、ただ寂しくて、
溢れた涙は本物だったんだ。
思い出を描いた。
夏の空が、ああ、透き通っていた。
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