夏空を描いた。青く、青く、ただ透き通っていた。
逃げ水を追ったキャンバスの上の、空っぽなエモ。

乱雑に敷いた飛行機雲も、
馬鹿みたいに煩い蝉の音も、
描けば描くほど遠のいていくのが不思議だった。
昼下がり。虚無。帰り道。間違い。
何かを失くしたような気になった。
気になっただけ。

僕はカメレオン、カメレオン。
生来知んない愛を描く。
夕立みたいな水彩画、何をどうやったって満たせない。
カメレオン、カメレオン。
空想だけの夏を作っている。
青に染まって描いている。


偽物を描いた夏の空はまあ、いつも通り。
キャンバスが並ぶアトリエに一人、彼女は来た。

「何をしてるの?」と彼女が問うた。
「絵を描くのさ」と僕は嘯いた。
描けば描くほど劣等感。水を掬ってまた彩って。
「私も描いて!」と彼女が言った。
「気が向いたらね」と適当に流して、

少し笑って、

笑って、

笑ってしまったから……。


僕はカメレオン、空っぽさ。
生涯知んない思い出だけ知りたいと描いた。
ちゃちな願望ばっか肥大した。
カメレオン、カメレオン。
どうやっても僕は僕だけど、
傷も、痛みさえ、美しいと思うから。

カメレオン、カメレオン、そうかい。
知った絶望を夕立みたいな滑稽画にして、どうかしちゃって笑いたい!
カメレオン、カメレオン。
空想だけの夏に染まっていた僕、僕、僕はカメレオン、カメレオンだ。

案外、ただ虚しくて、
案外、ただ寂しくて、
溢れた涙は本物だったんだ。


思い出を描いた。
夏の空が、ああ、透き通っていた。

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ハナダイッシキ

西の棚、十二段目、端から二十五番目。
二冊目、縹一色の物語。

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投稿日:2022/01/29 18:45:03

文字数:661文字

カテゴリ:歌詞

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