「どうだ……。生き返った気持ちは?」
 気づくと少年は謎の液体の中で目を覚ました。正直、夢だと思っていた。
「おい、どうだと聞いているんだ。
 君は人類の歴史に残るんだぞ?」
 白衣の着た人間に言われ、自分の存在をおもいだす。
 彼の名前は――コノハという。
 どうやら、彼は終わった命を蒸し返す機械らしいのだ。



***

 彼は昔の記憶を揺り起こす。
 確か、少女が泣き叫び、「また会いたい」と呟いて――そんな感じだったのをおぼえている。
 けど、記憶は曖昧で、それがほんとかどうかもコノハには解らなかった。
 コノハはそんなことを思いながら、塀の向こうの街を眺めていた。
 見た目世界の技術を濃縮したようにも視えるその街はただのハリボテに過ぎなかった。
「……“終末実験”ねえ……」
 コノハは先程科学者から聞かされた実験概要なるものについて思い出していた。要するにこういうことだ。
 この世界のある場所にスイッチがある。そのスイッチが起動さえすれば終末実験のはじまり、ってわけだ。
 でも、それが誰によるものかはさっぱりで、早く終わって誰かと話をしたいなあとか思ったりしている。
 ところで――“終末実験”は昨日時点で予想通りグダグダすぎて、もう8月も半分を過ぎようとしていた。
「もう諦めたほうがいいんじゃないかなあ」
 コノハはそんなことを思いながら街を歩いていた。ふと、信号機の方を見ると、


 少年が、期待はずれの車線の先で飛び散った。
 泣き叫ぶ少女を、コノハは特に思うこともなく眺めていた。
「ああ、またか」
 そう思って、コノハは空を見上げた。
 ――秒針は進み出すのをやめて、世界もろとも眩み出そうとする。
 この夢は――まだ、終わらない。



***

「……なんだ、大変だな」
 ハリボテの街の外で、コノハは眠そうに欠伸を一つした。
 外はなんだか騒がしくて、警報がさっきから鳴りまくっている。警備はどうなんだろう。警備は。
「……まあ、まだ時間はあるからいいか」
 そう言ってコノハはまた回想へ入った――。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

カゲロウプロジェクト 07話【自己解釈?】

「目を醒ます話」に入りました。ほとんど自己解釈の原稿流用……いや、ちゃんと改稿してますってば!

―この小説について―

この小説は以下の曲を原作としています。


カゲロウプロジェクト……http://www.nicovideo.jp/mylist/30497131

原作:じん(自然の敵P)様

『人造エネミー』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm13628080 
『メカクシコード』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm14595248
『カゲロウデイズ』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm15751190
『ヘッドフォンアクター』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm16429826
『想像フォレスト』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm16846374
『コノハの世界事情』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm17397763 
『エネの電脳紀行』
『透明アンサー』
ほか

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閲覧数:833

投稿日:2012/05/17 23:29:31

文字数:873文字

カテゴリ:小説

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