映画のワンシーンの様に解除されて行く文字化け、相打つ様に次々と壊れて行く銃、目まぐるしいデータと報告、歓声なのか悲鳴なのかすら、もう解らなくなっていた。

「後3つか…。」
「やはり蕕音流船でしょうか?彼の場合原版との一致もありますし…。」
「…言霊は『認識』が重要である反面『無知』『感情』も大きく影響する、
 一概には言えない。感情だけならあのお姫様が最強だろうしな。」
「――幾徒様!琴音純が!」

緊張を帯びた声にモニターを見た。もう少しと言う慢心があったのか、ある程度のトラブルは予測していたが、今日初めて本気で驚いた。衣装から覗く漆黒の羽よりも、狂気に染まる真っ赤な瞳よりも、その手に握られた銃に釘付けになった。

「どう言う…誰の銃だ?!」
「識別コード確認…『Serpentaurius』です!」

突然の事に頭が真っ白になった。あれは確かに流船の銃で、あの衣装を着ていたのは確かに純だった筈…では何故?何がどうなって…?

「幾徒様!琴音純が…来ます!」

声とほぼ同時に腕に重い衝撃が落ちて来た。受け止めた銃に少しずつ亀裂が入るのが見える。僅かに口を動かすと搾り出す様な声が漸く耳に届く。

「…く…と…。」
「お前…流船か?!一体何時?!くっ…!」
「撃て…ない…!さ…適合…!純…!駄目だ…!」
「え…?」
「撃た…せない…!」

狂気を必死に抑えた言葉に、頭の中でバラバラだったパズルが1つに収まった。

何故流船が純と入れ替わったのか?
――最適合者に純を撃たせない為に。

何故純を撃たせないのか?
――最適合者は純を撃つ事が出来ないから。

誰よりも、何よりも、自分よりも誰かの為に言霊を使い続けた『最適合者』は誰?

「幾徒様!大容量データ発生を確認!これは…『Gemini』です!」
「そう言う事かよ…フェミニストが!おいステージのMC!それからレッド!必殺技のコールでもしとけ!」
「りょ、了解!」
「…後は頼んだぞ…ぶちかませ!…鬱音コア!」

歓声と、引き金と、銃声と、目の前の二つの銃が砕け散る音、そして…。


「―――アクセス!」


全てを終わらせる声を確かに聞いた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

コトダマシ-108.全てを終わらせる声-

え?長い?ゴメンナサイ…

閲覧数:129

投稿日:2011/06/14 18:49:55

文字数:909文字

カテゴリ:小説

クリップボードにコピーしました