「本当は、あたしは強くなんか無いんだよ」
寂しそうに、ホワイトは言う。ブラックに抱きつきながら、ホワイトは言う。その口調は、とてもとても弱々しく、とてもとても寂しそうに。
「皆、みんなあたしを強い子だっていうけど、其れはあたしが強いんじゃないの。あたしを、あたしと言う存在を皆が支えててくれたから、あたしはあたしで居られたの。だから、あたしは強くないの。とてもとても弱いの。弱い存在なの。支えが無くなったら脆く壊れてしまう。其れが怖いの、誰もあたしをあたしと思わなくなるのが、途轍もなく、恐いの」
恐い、怖い。そう何度も呟きながらホワイトは力なく項垂れる。ブラックは只、何も言わずに聞いていた。其れしか出来なかったから。
「でも、本当にやなのはあたしがあたしでなくなる事じゃなくて、誰もあたしの事を見もしない、誰もあたしの言葉を聞こうともしない、誰も、誰もあたしが存在する事を忘れる事、だと思うの」
ギュウ、とブラックの上着を握るホワイトの手に力が篭る。離さないとでも言うように。離れないで、と言うように。
「世界中の誰もがホワイトを見も、言葉を聞きもしなくても、俺はずっとホワイトの傍にいて、ホワイトの事を見るし、言葉を聞くよ」
ブラックは独り言のように呟く。ホワイトは不思議そうな目でブラックを見つめた。その目からは、何故か、一粒の涙が流れていた。
「え・・・」
「でも大丈夫だよ」
先程の雰囲気とは打って変わって、明るい口調でブラックは言う。
「誰もホワイトの事を見なくならないし、言葉を聞かなくなる事なんてない。ホワイトの周り、見てみろ? 仲間で溢れかえってるぞ?」
ブラックの言葉を聞いてる間にも、ホワイトの瞳からは涙が溢れる。ポロポロ、ポロポロ。其れを拭いながらホワイトは自嘲気味にアハハと笑う。
「そうだね、そうだったね。何で気付かなかったのかな? あたし、罰当たりだね」
「そう言うものだよ、誰だって。言われないと気付かないものだよ、大事なものって」
言いながらブラックはホワイトの背を優しく撫ぜる。その手の平はとても温かかった。
「・・・そ、だね。ありがとブラック」
「礼を言われる立場じゃないよ、俺は」
そんな君の一番になりたいと思う、俺は傲慢で強欲なのだろう。喉元まで出かかった言葉を飲み込み、ブラックは笑う。
ホワイトはキョトンとしていたが、不意にクスリと笑い出した。
その無垢な笑顔を、汚してはならない。自分のものにしようとはしてはいけないのだ。そんな事を考えてしまったから、だから神様は俺の方に罰を当てたのだ。
肝心な人は、何も知らない。知らなくて良い。その笑顔を護れるのなら。
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