一体此れは如何言う事だろう? 目の前の光景に、少年は凄く悩んでいた。目の前には木が生えていて、その根元で少年も良く知っている少女が寝息を立てて、眠っていた。
「・・・ったく、無防備と言うか何と言うか・・・」
 ハァ、と溜息をつき、少年は少女を見る。何時もは神経を抜き身の刀の様に研ぎ澄ましている少女だが、余程眠りが深いのだろう、スウ、スウ、と寝息を立てたまま、微動だにしない。
 サワリ、と風が吹き、木の枝を揺らし、葉を踊らせる。少女の髪もまた踊り、少年の髪も揺れた。其れでも少女は起きる気配が無い。
 再度、溜息を付き少年は少女を見つめる。少女が起きていたのなら、先ず出来ないであろう。自分よりも小さい手、自分よりも小さく、また細い腕、足。整った顔立ちに、今は閉じられている目の色は、とてもとても綺麗な、空の様な、蒼。
 だが其れでも少女が起きる気配は無い。此処まで眠りこけてしまう様な事を、彼女はしたのだろうか。一瞬考えて、したのだろうという考えに少年は行き着いた。
 見た目の柔らかさ朗らかさとは打って変わり、この少女は格闘少女なのだ。大抵の大人なら、難なく倒せる。その細い腕で、その細い足で、思いも見ない一撃をかます。この少女の後ろから近付こうものなら裏拳を食らい、大ダメージを受ける事は彼女を良く知っている者なら暗黙の了解だ。実際、少女の幼馴染の少年は何度も裏拳を食らい、眼鏡を壊された、何て事もあるのだ。
 幸か不幸か少年も武道を齧っていたので少女の裏拳の餌食にはならずにいるが、受け止めてもかなりの衝撃が己の手に伝わってくるのだ。少女の幼馴染の少年に、この時ばかりは同情する。
 サワリ、風が吹き枝を揺らし、葉を踊らせる。不意に「クシュン」と小さなくしゃみが聞こえ、何だと思ったら気の根元に蹲っていた少女が少し寒そうに、しかし目を覚まさずに己の腕で己の身体を抱いていた。
 三度目の溜息を付くと少年は鞄をおろし、着ていた寒色系の上着のチャックを下ろす。そして其れを脱ぐと少女の身体にそっと被せた。
 鞄を肩にかけると少年は帽子のつばをキュ、と下げ、その場を後にした。
 また、風が吹き、少女の髪を踊らせる。少女が起きる気配は、まだ無い。

「・・・って事があったんだ」
「ふぅん、そう。・・・で、ブラック」
 次の日、少女の幼馴染の少年と出会った少年―ブラックは昨日の経緯についてこの少年に話した。
「? 何?」
「寒くないのか?」
 言われてブラックは己のしている格好を見る。上着は少女に貸している為、着ているのは黒のTシャツ一枚だけだ。
「別に。寒くないけど? 俺もホワイト程、とまではいかないけど結構寒さには強いからな。ただ放電しちまうけど。何なら触ってみるか? 後で痺れる後遺症付きだぜ?」
「いや、遠慮しとくよ。それに其れは後遺症とは呼ばないだろ」
「あ、やっぱり?」
「やっぱりって・・・」
「あ、ブラック。こんな所にいたんだ」
 少年の声を、先程話の話題に出ていた少女の声が遮った。
「あ、ホワイ・・・ト・・・」
 後ろを振り返り、名を呼ぼうとしたブラックの動きが止まる。
「こんな所にいたんだ、探したんだよ?」
 探したんだよ、と言う口調からは程遠く、少女―ホワイトの口調は軽い。少しも息を乱さずに二人の所まで駆けてきた。
「・・・あの、ホワイト」
「? 何?」
「その格好は?」
 ブラックに言われ、ホワイトは改めて己の格好を見る。そして あぁ、これ? と言った。
 昨日、ブラックがホワイトにかけた上着を、ホワイトは着ていた。
 可笑しくない訳ではない。ただ、やはり男女の違いがあるからか、ホワイトには若干大きいようだ。袖口からは指先しか見えないし、丈もホワイトの穿いているホットパンツよりも長い。チャックをしていない事は幸か不幸か。
「いや、手に持ってると走り辛くてさ、面倒臭いから着た」
「や、なら鞄の中に入れろよ」
「あ、そうか」
「おい!」
 ブラックの突っ込みをスルーし、ホワイトは あー、はいはい、五月蝿いなぁ、と言いながら上着を脱ぎ、はい、とブラックに渡した。
「・・・・・・へ・・・?」
「へ? じゃなくて・・・。あ、やっぱり洗って返した方が良かった? なら・・・」
「あー、良い! 良い! 良いから! つーか大丈夫ですから!」
「何で急に敬語!?」
 今度はブラックがホワイトの突っ込みをスルーし、上着を受け取る。あ、あたしそろそろ行くね。それじゃあね、それだけ言うとホワイトは来た時と同じ様に掛けて行った。
「・・・。ホワイトらしいというか何と言うか・・・」
「あぁ、全くだ。しかし・・・」
「?」
「自分よりもサイズの大きい服を着ている女の子の図があんなに良いものだとは思わなんだ」
「其処かよ!」
「冗談だよ冗談」
「お前が言うと冗談に聞こえないから恐いわ・・・」
 ハァ、と溜息を付くと少年はカチャリと中指で眼鏡を直した。そして、此れからも自分は苦労人のままでいる様だと思い当たり、再び溜息を付いた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

無防備な彼女と

昨日書いててアップしようと思ったら消えちゃって涙目になった奴
元々書いてたのとちょっと変わっちまったけどまあ良いや←
取り合えず女の子が男の子の服を着るというシチュが最近気に入って来てます←

危なくなったら消します。

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閲覧数:257

投稿日:2011/03/26 17:25:31

文字数:2,081文字

カテゴリ:小説

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  • 囮 

    囮 

    ご意見・ご感想

    こんばんは^^*

    僕はそのぶかぶかの服を着てる派だと思う(・ω・´
    借りるまではすごい遠慮するけど、借りたら借りたで全く躊躇せず着る←

    小学校の時、制服の上着はお兄ちゃんの着なくなったやつ着てたけど、
    お兄ちゃんのだから案の定でかいし(本当に指先しか見えない)
    スカートは小2から着てるやつで最大限に伸ばしてもミニスカになるし
    ほんのちょっとしかスカートが見えてないかった(笑)
    気にしてないけど。気にしないけど。するわけないけど!←
    着てるの自分だからね(^^;

    しかし女の子の友達がそんなだったらすごく萌えを感じる←
    2次元だったらもっとすごい萌えを感じる←
    もっと言うと(強制終了)

    2011/03/26 20:39:48

    • lunar

      lunar

      こんばんは^^

      そうなんだ、私も一回だけ男子のブレザー着た事あるけど、意外とでかくて吃驚した。私とあんまり身長差ない男子だったんだけど・・・。

      そうなんだ。私は小学校低学年の頃は良くスカート穿いてたけど三年位からズボン派になってきて今でも私服は大抵ズボン。たまにスカート。滅多にないよ!←

      何か急に強制終了しちゃったよ・・・。

      それでは♪

      2011/03/26 22:39:26

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