緑と水に 愛された
その街はまだ 美しい
昔の話 怪我をした
男がそこに 辿り着く

肌は爛れて 目は潰れ
肉は抉れて 虫がわき
身体は腐り ぼろぼろで
それでも彼は 生きていた

男はここで 死ねるなら
それでもいいと 考えた
緑と水に 愛された
この街はまだ 美しい

けれど女が 現れた
女は彼に 微笑んで
彼の身体を 抱きしめた
彼は女に 恋をした

身体の虫を 取り除き
腐った肉を 取り払い
爛れた肌に 布を巻き
彼にスープを 食べさせた

彼は女に 恋をした
怪我が治ると その彼は
女の為に 働いた
女もそれを 喜んだ

ある日病が 流行りだし
多くの人が 死んでいく
緑と水に 愛された
街の人らは こう言った

男は悪魔 死の使い
彼が病を 連れてきて
人々に死を 振り撒いた
彼は八つ裂き 処刑せよ!

女は彼を 窯に入れ
街の広場へ 現れた
彼が悪魔で ない事を
伝える為に 現れた

やがて陽が落ち 夜がきた
男はじっと 窯の中
隠れていたが 朝になり
とうとう外へ 飛び出した

男はあっと 声をあげ
街の広場へ 駆け出した
煙くすぶる 処刑台
雨がぽつりと 降りだした

男は泣いて 縋り寄り
その十字架に 抱きついた
炎で焼けた 君の肌
僕の涙で 癒せたら!

けれども彼は 気が付いた
女はそこに いなかった
十字架に火を つけた時
女は途端 消え失せた

緑と水に 愛された
街の誰かが 呟いた
女は消えた 魔女だから
煙のように 消え失せた!

しかし男は うつむいて
静かに雨に うたれると
誰にも告げず 街を出た
涙を流し 街を出た

それから雨は 降りやまず
いつしか街は 水浸し
人は街から 出て行った
街は静かに 沈んでく

緑と水に 愛された
街は昔に なくなった
静かに続く その雨は
女を悼む 涙雨
 

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

真夜中の小雨―涙雨―

 
真夜中の小雨、童話部より。
長男からボツをうけたものと、α版と、童話部で三つ目ですね。
いつの間にかシリーズに。

詰めの甘いα版はこちら
http://piapro.jp/content/s0byenopyxaze008
哀れなβ版はこちら
http://piapro.jp/a/content/?id=syjvkwltcnmmwfi8



これは全て七五調(のはず)にしました。
違ってたらすみません。
七五の四行詩を十七段。
長すぎます。
すみません。


怪我の部分はちょっとやりすぎました。
童話の時点で後輩から「状態が怖すぎます‥‥!!」と苦情をたまわっていたのですが、
詞にするにあたり字数をあわせる為に目まで潰しました。
ごめんなさい。


長すぎますけれど、最後まで書けたので個人的には満足です。

え?
歌詞ですよ、
誰に何と言われようと歌詞ですよ。
定型詩だなんて言わせません。
 

閲覧数:59

投稿日:2008/11/17 16:57:24

文字数:780文字

カテゴリ:歌詞

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