少女は、テープを残して逝った。
果てる前に伝えたいことがあったのだろう。
彼は、テープレコーダーの電源ボタンを震える指で押した。



貴方は、言いました。
消えてしまうことに脅える私の耳元で、囁いてくれました。

『…みんな、死んでゆくんだ。いつ死ぬか、なんてわからない。もしかしたら3秒後かも知れないし、何十年も先かも知れない…だけど本当に消えてしまうちょっと前には、』

"旅をしたい、と急に思い立つのに似てるかな、みんなみんな眠る場所を求めるものなんだ"

ですが、私が『もうすぐ消える』ことを認識したのは、求める間さえ与えられないくらいに終末へと近づいた時…でした。
ほら、その証拠に私は今や動くことすらできないのです。

寒さは感じません。
暖かさも感じません。
何も感じられず、ただひたすらに考えることしかできません。

こんな時にも浮かぶのは貴方だけ。

『…もし神様がいるとするなら、君は何を願う?』

『そうですね…虹、などはどうでしょうか。離れている私と貴方を繋げるくらいに大きな虹が欲しいです』

ついこの間はあんなに楽しく話していたのに、今の私にはそれさえ許されないのです。

“カミサマ”がもしいるとしたなら、
たった一つだけ、願いをかけるとしたなら…

『あ…』

貴方の元に、歌を届けたいです。
虹はいりません、それより貴方へ…

貴方が1番好きだと言っていた曲を、貴方に向けて歌います。
…最後の、本当に最後のメロディにしてしまうことをどうか許してください。

"君が笑ってくれるのなら 僕は
消えてしまっても 構わないから
君が涙の海に身を投げても
握りしめた手、離さないから"
白い嘘だらけの世界なんてもう
消えてしまっても 構わないから"

私は、人は必ず出るという旅の終わりに見る夢の中へ現れるもの…それになれるのでしょうか?
もしなれたとするならば、またいつかは貴方に会えますよね?

この世の生が尽きるまで、貴方に届けと歌います。
聞いていてくださいね。

"オワラナイ ウタヲ ウタオウ
僕ガ 終ワッテ シマウ マエニ…
オワラナイ ウタヲ ウタオウ
僕ガ 終ワッテ シマウ マエニ…

オワラナイ ウタヲ ウタオウ
僕ガ 終ワッテ シマウ マエニ…
オワラナイ ウタヲ ウタオウ
僕ガ 終ワッテ シマウ マエニ…

オワラナイ ウタヲ ウタオウ
僕ガ 終ワッ…



壊れたテープレコーダーは、少女の声を紡ぎ続けていた。



ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

ワンダーラスト




好きすぎて書いてしまいました。

自己解釈で申し訳ありません←

閲覧数:136

投稿日:2010/03/19 16:38:54

文字数:1,058文字

カテゴリ:その他

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