うず高く積み上がったモニターや機材の山を崩さない様に奥へと進むと、電気が来ているのか明るくなっている所があった。幾徒がスイッチを入れると辺りのモニターやPCが次々と起動し始めファンの回る音が耳に届いた。

「うわ…っぷ!ほこりが…?!」
「下手に動くなって、崩れたらヤバいだろ。」

舞い上がったほこりを気にも留めず、幾徒は食い入る様に真ん中にあるモニターを見ては、目にも止まらぬ速さでキーを叩いていた。と、流船がトントンと肩を叩いた。

「ねぇ頼流、これって何?」
「PCの群れだな。」
「そんなの解るよ、そうじゃなくて、こんだけあったら何が出来るの?」
「…性能にも寄るから一概には…。」

言い掛けた所で幾徒が手を止めた。

「幾徒さん?」
「何これ?テキストデータ?」

『勇者と魔王を作り上げろ』

「…落書き?にしては意味ありげに置いてあるね。」
「まぁそれは結論として書いてあるだけだな、本命のデータはこっちにあった…言魂の
 対処法と、その解決策がな。」
「やったじゃん!」
「…それがちょっとな…。」
「何か問題が?」
「原理は解るけど方法が思い付かない。」
「ちょっとちょっとぉ?!」

さらりと言ってのけた幾徒に数人が詰め寄っていた。確かにこの期に及んで『思い付かない』では済まされない訳だが…。

「原理はどうなんだ?」
「んー…有体に言えば、文字化けを集めてそれを凝縮させて、適合者一人に言魂の力を一点集中して
 撃てば良い。」
「じゃ、やれば良いんじゃないの?」
「簡単に言うな、一箇所に文字化けを集めたらそれこそパニックになるだろ、そもそも文字化けを
 どうやって一箇所に集める?」
「掃除機とか?」
「レイ…。」

皆が唸って黙り込んでしまった。確かに方法が思い付かないな、一体だけでも厄介な文字化けが何体も居れば下手すれば街の機能が麻痺する。よしんば出来たとしても誰がそんな状態で撃てるんだ?

「ねぇ、文字化けってどうやって出るの?」
「文字化けは『悪い言魂』みたいな物だな、物事を悪い方へ悪い方へと考える奴なんかが
 中てられて変化してるケースが多い。」
「それ作れないの?誰かにいっぱい撃ったりとかしてさ。」
「出来なくは無いが撃たれる奴のリスクが…それに上手い事集まるかどうか…。」
「うーん…一人には悪意で、一人には言魂…魔王と勇者みたいだねよくあるRPGとか戦隊物とか…。」
「…ヤクル、今何て?」
「へ?…いや…RPGや戦隊物みたいだなーって…。」
「RPG…戦隊…。」

暫くぶつぶつと呟いていた幾徒は、不敵な笑みを浮かべて言った。何だろう、この悪寒は。

「その手があったか…。」

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  • 非営利目的に限ります
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コトダマシ-94.不敵な笑み-

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投稿日:2011/03/31 03:50:36

文字数:1,116文字

カテゴリ:小説

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