あなたが好きだなんて、口が裂けても言えないけれど。
 どうしても好きだと言いたかったので、口裂け女になってみた。

 気味が悪いって振られたよ、イェー!

 口紅を塗って、マスクをして、夜の街へと出かけましょう。
 道行く人にアタシキレイと聞いて回るお仕事に就いた。
 引き攣ったツラでキレイだという人に「マスクの端から傷見えてんだろ」
 ってツッコミを入れるルーチンワーク。 

 ポマードの臭いは嫌い。
 べっこう飴の味は好き。

 中学二年(こども)の時に負った傷は、今でも血を流し続けている。
 友達の口裂け女子さんは一生これでもいいんじゃないと言っていた。
 まあ確かに、歯を磨く時は便利だけれど、物を食べる時は便利だけれど。
 人生に置いては不便な事しかないのであった。

 近頃じゃもう噂もいい感じに広まって、みんながべっこう飴をポケットに。
 これはこれでありがたいのだけれど、なんか申し訳ない気分。
 同時にナウでヤングな女の子の間でマスクをするのが大ブーム。
 レトロなべっこう飴の味も大ブームなんだってさ、死ねばいいのに。

 ある春の日に、口裂け女子さんを見つけたよ。
 昨今のブームを一緒に愚痴ろうと思ったら、顔を強張らせて逃げてった。
 その足取りは、口裂け女とは思えないほど遅くって。
 ああ、逃げる先には煉瓦の家があるのだろうと分かっちゃったよ。

 幸せになっておめでとうと言うべきか。
 自分一人だけ離脱しやがってぶっ殺してやると思うべきか。

 面倒だから放っておくことにしました、イェー!

 あたしの前に立った人は、藁の家か木の家か。
 チョークを呑めば騙せる馬鹿か。
 あるいは馬鹿には見えない家の持ち主で。

 実を言うと、振られて口裂け女になったけど。
 振られる前になったのか、振られた後になったのか。

 自分でもよく分かってないんだよ、イェー!


 小さな小さな子どもと出会い。
 「おばちゃんの口はどうしてそんなに大きいの?」
 「お前を呑みこむためさ」と答えようとしたけれど、嗚咽が出てきて喋れなかった。
 ああごめん、おなかに石を詰めるのは、泣き終わるまで待ってくれない?

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  • 非営利目的に限ります

口裂け女になってみました

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投稿日:2010/03/28 19:32:34

文字数:918文字

カテゴリ:歌詞

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