ワンオフのルカの淹れた紅茶を堪能した後、自室に戻ってきた雅彦。時間つぶしのため、アルベルトの記事を読みだした。一番新しい記事は、南アフリカ共和国の新興企業のついての記事を書いていた。どうやら現地まで行って取材をしたらしい。
「ふむ…」
記事を見ながらその新興企業の開発した技術の内容を確認する雅彦。彼の知見は参考になり、記事を書いた当時はさほど注目を浴びなくとも、後々大化けした企業もあるなど、新しいことに対する嗅覚はなかなかものだと思っていた。後々ボーカロイドに関わることになった例もあるので、彼の記事は一通りチェックしていた。
(…少し彼と話ができるかな?)
そう思った雅彦は、アルベルトに連絡を入れた。
「安田教授、どうされました?」
手すきだったのか、応対に出るアルベルト。
「…今、大丈夫かな?」
「今やらないといけない用事はないですね」
「新しい南アフリカ共和国の企業の記事、読ませてもらったよ。内容はしっかりしていたし、なかなか面白かったよ」
「ありがとうございます」
「あそこの会社の話、もうちょっと聞かせて欲しいんだ。機密情報は不要で、オープンにできる範囲でいいから」
「そうですね。あそこの会社のトップは面白い方で、安田教授と気が合う気がしますね」
「本当?」
「はい、私が安田教授と親しいという話をご存じでしたので、興味をお持ちだったらしく、少し安田教授の話はしました。一度話されてみてはいかがですか?」
「分かった、その話は考えておくよ」
そうして雅彦は一通りアルベルトから聞きたいことを聞き終わる。
「…ありがとう。色々と話してくれて。一度、その方と接触した方が良さそうな気がするね」
「ひょっとすると、向こうの方から安田教授に接触してくるかもしれませんね」
「話を聞く限り、その可能性はありそうだね。今から話すのが楽しみだよ。まとまった時間を用意しておいた方が良いかもしれないね」
「…安田教授は本当に凄いですね」
感心したようにアルベルトがいう。
「…僕は凄くないよ。ミクたちが凄いだけさ」
「…ですが、こうやって色々な分野に目を向けて、ミクさんたちのために色々とされているのは…」
「それは、ミクたちが凄いから、それに合わせて僕も頑張らないといけないと思っているだけだよ」
涼しげな顔で言う雅彦。このスタンスは、ワンオフのミクたちと住むようになってから貫き続けているスタンスだった。それは、初めてワンオフのミクのライブで彼女を見た時の想いに元をたどることができる。
「…それじゃ、色々と話を聞かせてくれてありがとう」
「いえ。それでは失礼します」
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