抱き締められたまま顔を上げる事が出来なかった。勿論やましい事した訳じゃないけど、真っ直ぐに先生の目を見れなかった。どうしよう、絶対絶対誤解してる!してなくても良い気分じゃないよね?あ、でも羽鉦さんがスキンシップ激しい方だから、そのせいで、とか言ってみれば誤魔化したり…いや、無理無理!黙ってたら余計何も言えなくなっちゃうよぉ~~。

「ちぃーっす。」

どれだけお約束でタイミング悪いんだろう、羽鉦さん…。と言うかこの状況で入って来る時点で、もう…。抱き締めている腕に力が篭った。色んな意味でドキドキが更に増して息苦しい程だ。

「羽鉦。」
「って…何か…殺気感じるんだけど…。」
「…スズミが羽鉦臭い…。」
「いや、何もしてない!してません!神に誓って本当に何もしてないって!」
「じゃあ何で?」
「そ、そんな小学生みたいな口調で…。」

更に腕に力が篭る。顔を埋められてて先生も後ろに居る羽鉦さんも様子が判らない。所謂『一触即発』って言う状態なのかな…。と言うか苦しい…締め過ぎ…!息苦しさの余り先生の胸を手の平で叩く。ハッと我に返った先生は腕を緩めてくれた。

「…貧血で倒れたから俺のベッドに寝かしてただけだって…。」
「何でお前の部屋…?」
「や、だから話してただけだって。」
「そ、そうですよ、先生。話の途中で私が倒れちゃって…!」
「…何か嫌…羽鉦臭いスズミ…。」

先生もしかして…拗ねてる?ヒヤヒヤしてたけど今度は何だか可愛くて笑ってしまう。思わず吹き出しそうになるのを必死で堪えていると、不意にバランスを崩し、ひょいっと抱き上げられた。

「え?え?先生?何処へ…?」
「俺の部屋!」
「ちょ…騎士?!」
「仕事ならちゃんとやるよ。」

軽々と私を抱き上げたままスタスタと廊下を歩き出した。先生の部屋って…?!何この急な展開!!こんなの先生らしくない、そんなに気に障ったのかな?そりゃそうだよね…体から羽鉦さんの匂いなんて…。と、改めて思うと顔がカッと熱くなった。押さえられた手の感触や、息が掛かる程の距離で見詰められた事を、忘れた訳じゃなかったから…。
エレベーターの中で先生は私を床にストンと降ろすと、目を逸らしたままばつ悪そうに言った。

「…ごめん…。完全ヤキモチ。」
「あ…私…その…。」
「スズミを疑ってる訳でも羽鉦がそう言う奴じゃないのも判ってる。
 けど何か、止まんなくて…。」
「先生…。」

どうしよう…私…いつの間にこんなにも好きになったんだろう…。会って数ヶ月の筈なのに、もうずっとずっと前からみたいに愛しいよ…。私変なのかな?言葉を飲み込んで、視線が絡んで、心臓が一瞬大きく跳ねた。背中に少し硬い壁の感触、対照的に何処までも優しい手が私をそっと閉じ込めた。

「何やってんだろ、俺…。これじゃただのガキみたいだな。」
「でも…私は…好きですよ。」

先生は嬉しそうに笑うとゆっくり唇を重ねた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

BeastSyndrome -19.世界で一番優しい檻-

あ…先生ちょっと…こ、こんな所で…!(*ノノ)的な何かになってしまった…w
両方自重無しサーセンOrz

※次ページはネタバレ用の為今は見ない事をオススメします。

工音兄妹好きは張り切って見て下さい。

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投稿日:2010/06/01 17:36:08

文字数:1,220文字

カテゴリ:小説

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