「あの~闇月さん?」
「羽鉦で良いよ~、何?小鳥ちゃん。」
「小鳥ちゃんじゃなくてスズミです…じゃなくって!どうして貴方が此処(楽屋)に
いるんですか!」
「離れたら護衛の意味無いでしょ。」
ニコニコ笑顔が段々イライラして来たかも。保護施設と言っても寮みたいな物らしく、
四六時中施設に居なくても構わないのだ。勿論施設から仕事や学校に行く人も居る。
私は収録の為ここに来ているんだけど…。
「ユウ~?支度終わった?」
「その人居るのに着替えられる訳無いでしょ!!」
「時間押しちゃうでしょ!ワガママ言ってないで速く着替えて頂戴!」
「手伝おうか?」
「良いから出てけ~~~!」
手近にあったティッシュ箱を投げつけてみたけどあっさりかわされた。
そう言えばBタイプはでっかいヤマネコって言ってたっけ…。ああ、もぉっ!
そもそも奏先生非常識過ぎる。仮にも女の子の護衛にあんな怪しい人を選ぶなんて!
そうだ、変えて貰うとか出来ないのかな?女の人でも強い人居るし、うん、決めた。
戻ったら護衛を他の人に出来ないか聞いてみよう!
「ユウさん入りまーす。」
「お早う御座います。」
「ユウせんぱーい!」
「あ、リヌちゃん!」
収録を終えたばかりと思われるリヌちゃんこと『冰音 リヌ』。最近伸びて来た同じ事務所の新人で私にとっては後輩に当たる。
「先輩引っ越しちゃったんですよね?折角おウチ近かったのにちょっと残念です。」
「引越しって言うか保護施設だから…半分入院みたいな気もするんだけど…。」
「あの新しい所ですよね?今度遊びに行っても良いですか?」
「え?良いのかな?許可とか要るのかな?えっと…マネージャーに聞いて…。」
「大丈夫だよ。いつでも遊びにおいで。可愛い子は特に大歓迎♪」
上から声がしたと思ったら頭を抱え込まれた。…お、重いんですけど…。
「先輩、誰ですか?この春雨みたいな髪の人。」
「は、春雨?!」
「ぶっ!…くくくくっ…!」
流石リヌちゃんナイス天然!あ、だめ、笑いが止まらなくて息が苦しく…。
白くて長くて、確かに春雨とか素麺っぽいかも!
一頻り笑ったせいか私の分の収録はスムーズに終わった。これもリヌちゃんのお陰だな♪
うきうきとした気分で施設へ帰る車の中で、ふと羽鉦さんが口を開いた。
「気を使わせて悪かったね。本当なら女性の手を借りたい所なんだけど、
そうも行かなくてね。」
「奏先生は何で羽鉦さんを私の護衛にしたんですか?確かに芸能界に居ますけど
ちょっと大げさと言うか過保護と言うか、そこ迄してくれなくてもって言うか、
此処に来た時だっていきなりお姫様抱っこだったし。」
「へぇ…、で?ドキドキしちゃった?」
不意に顎をくいっと持ち上げられた。間近で思い切り目が合って言葉を飲み込む。
この人どうしてこんなスキンシップが過剰なんだろ、これってセクハラ?
と言うか…近い!顔が!そんなに近付く必要絶対無い!無い!!無い~~!!!!
「ダメだよ、あの先生を好きになっちゃ。」
「…え?」
「あの人は俺の恩人だから。」
「恩人…だと、ダメなんですか?」
「さぁねぇ…うっぷっ…!残念。」
もう少しで触れそうだった唇を咄嗟に手で押さえた。油断も隙も無いって正にこう言う時に使う言葉よね、うん。忘れちゃいけないわ、この人はネコの皮被ったオオカミ!
うっかり気を許したら色んな意味で食べられちゃいそうだわ!
「…可愛いねぇ…。」
BeastSyndrome -3.天然は無敵です!-
無敵なんです!
※次ページはネタバレ用の為今は見ない事をオススメします。
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