朝だ。
俺は部屋を出る前に部下三人に呼びかけた。
「みんな・・・・・・。一つだけ、隊長の俺に約束してほしい。必ず・・・・・・必ず四人で生きて帰ろう。」
「ああ、当然だ。」
「僕達なら、きっと生き残れる。」
「だいじょうぶさ!」
「よし。いくぞ。」
「それじゃあ、行ってくる。」
「ミク・・・・・・ワラ起こそうか?」
「いいよ。目が覚めたら言っておいてくれ。」
「ミク。」
「ん?」
「必ず・・・・・・帰ってきて。」
「ああ。分かってる。」
「タイト・・・・・・行ってしまうんだね。」
「はい。」
「また、還ってくるよね?」
「その保障はありません。」
「タイト・・・・・・!」
「もし俺が帰ってこなかったら、その時は、キクをお願いします。」
「・・・・・・分かった。」
「行ってきます・・・・・・。」
「ああ。行ってらっしゃい。」
俺達ソード隊は、水面基地を後に、雪峰へ飛び立った。
少佐と司令に敬礼で見送られて。
タイトは、俺たちが出発したと同時に雪峰のヘリに乗り込んだ。
「必ず生きて還る」
皆、この思いを携えて・・・・・・。
機体がエレベーターによって空母内部に収納され、トラクターに移動され停止したあと、俺はコックピットから出ようとした。
すると、機体のすぐそばに見覚えのある人物が俺を待ち構えるようにして立っていた。
「また会ったね春瀬君。」
「矢野大尉・・・・・・。」
俺は機体から降りて大尉と向き合った。
「君達は、この作戦において何か重要な役割を担うらしいよ。」
「そう・・・・・・ですか。」
「立ち話もなんだから、とりあえずブリーフィングルームへ行こう。」
「はい。」
雪峰のブリーフィングルーム・・・・・・。
水面基地より狭く、天井は極端に低く薄暗いが、不十分という訳ではない。
ブリーフィングに使用すると思われる機材は、このスクリーンとプロジェクターだけだろうか。
矢野大尉が席に着いた俺達の前に出てきた。
「これより、興国核強制撤去作戦のブリーフィングを始める。」
俺達は立ち上がり、敬礼した。
ここにいるのは俺達を含めて九人。ソード隊とロンチ隊のみだ。
不審に思ったのが、今夜の作戦に参加するはずのタイトがいないことだった。
「先ずは今夜00:00時にまで、この雪峰が興国の海岸線に可能な限りまで接近する。そして、00:00時に雪峰を発艦。興国の内陸の・・・・・・。」
大尉がスクリーンに映し出されたマップにレーザーポインターを当てた。
「この座標に、核発射用ミサイルサイロがある。ここをウェイポイントAとする。衛星写真から鮮明な写真を得ることができた。」
矢野大尉がPCを操作すると画面にミサイル基地と思われる写真が出現した。機材は水面基地より遥かに劣るが大尉自身かなりプレゼンテーションが上手い。
「しかし、我々の目標はこれではなく、ミサイル発射管制用レーダーの破壊だ。ミサイルサイロの場所を伝えたのは絶対にここには誤射してほしくないためだ。空対地ミサイルのAGM-84を使用し、レーダーを撃破する。攻撃の際、AWACSにそれを伝えるように。基本的にトラブルでもなければ、我々は一直線にここを目指すことになる。興国内に接近した場合、高度を五百メートル以下に保つことでレーダーに捕捉されることを回避できる。また、衛星写真によると基地の周囲に多数のSAM陣地が設置されている。これを無力化するために、陸軍が協力する。SAM陣地を武力制圧する予定だ。我々は、その行動を滞りなく遂行させるための陽動も兼ねている。陸軍にはもう一つ、核の撤去を目的とした部隊がある。彼らに対しても同様だ。だが、部隊には加わらず単独で行動する工作員が存在するが、彼の役目は地上部隊が基地に突入する際の侵入経路を確保することだ。」
まさか、その工作員というのが、タイトのことなのだろうか。
大尉はタイトのことを知らない・・・・・・?
「我々の任務が完了しだい、また一直線に、ウェイポイントBがある離脱エリアに急ぎ、空母に帰還、そのまま興国領内を離脱する予定となっている。途中で敵戦闘機の迎撃を受けても、決してかまうことなく、空母に戻るように。それらの迎撃は雪峰の付近で待機しているサンドリヨンに任せる。作戦に使用する時間は一時間。任務達成までにそれ以上が経過した場合、作戦を中断し帰投せよ。作戦内容の説明は以上だが、何か、質問のある者はいないかね。」
ブリーフィングの終わりにはいつもこの台詞だ。
神田少佐の場合大体のブリーフィングが十分な説明だったため特に質問をしたことは記憶にないが、大尉の場合も同じようだ。
やはりブリーフィングの質は部屋でも機材ではなく、説明するものの力量によるところが大きいということか。
皆、大尉の説明に満足しているらしく挙手する者は一人もいない。
「特に無いのなら、これにてブリーフィングを終了する。」
立ち上がり、敬礼。
今夜の、深夜か・・・・・・。
まさに奇襲という訳だ。
日本も、防御できない核となると目の色を変えてこのような強硬手段をとる。
己の身の安全を守るのもいいかも知れないが、もしこのことがマスメディアに知られたら、政府はどのような弁解ができるだろうか。
いや、そんなこと、俺には関係ない。
いまは与えられた目標を達成するだけだ。
それが終われば今までの謎が全て明らかになる。これ以上望むものは無い。
俺達は、ブリーフィングルームを去っていった。
ブリーフィングのあと、偶然格納庫近くをうろついているとなにやら人だかりができているのが目に入った。
近くに行くと、二人の男を皆が取り囲んでいる。物凄い熱狂だ。
なのにその二人の会話が聞こえてきた。
「やあ。また会ったね。」
「こうしてあんたと会えることが嬉しくてたまらないぜ。」
「ああ。この前の決着がつけられるな。」
「すぐに終わらせてやる。」
「なに、焦ることはないさ・・・・・・。」
「行くぞ!」
「来いッ!」
あ、あぁ、あれは・・・・・・矢野大尉と、タイト!
そうだ、この前の、決着!
「ホォォォォオオオワァァァァィアアアッッッッ!!!!!」
「イィィィィアアアァァァァァチャアアッッッッ!!!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どんだけ昔の映画だよッ!
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