『次の課題は招待客でこの施設いっぱいにするから。』

その言葉通り、翌日の朝からわらわらと人が港に着いた。スタッフに聞いた話では、動画の視聴者の中から抽選で選ばれたらしい…つまり…。

「すっげ~!あのホテルまんまじゃん!」
「きゃ~!見て~!あの塔動画と一緒だ!ほらほら、クラムが登った奴!」
「あ!ねぇねぇ!教会行ってみようよ!」

どいつもこいつも動画を見てる奴等って事だ!!ラウンジに行きたいけどこんなに人が居ると出辛い!私が出て行ったら皆恐がったりするんじゃないだろうか?どうしよう…ここはルームサービスを頼んだ方が…?

「あああああ!!!ラビット!!ラビットちゃんが居る!!」
「うぉおお!マジで?!本物だ!!」

目敏く私を見付けた女の子が大声を上げた物だからそこ等中の客がわっと集まって来てしまった。こう言う時どうしたら良いんだ?逃げるのも難しそうだし、第一こいつ等私が気持ち悪くないのか?

「可愛い~!動画で見るよりちっちゃいね~。」
「あ、あのっ!…わ…私が…き、気持ち悪くないのか?!動画…見たんなら…その…
 恐がったりとか…。」
「えぇ~?無い無い。すっごかったよ~あれでMVP取ってたじゃん。」
「そうそう、動物と会話出来るなんて尊敬ですよ~。」
「も…物好き…だな…。」

人に囲まれて怯えたのか、ゲルニカが急に暴れだして私の手をすり抜けた。

「ゲルニカ…?!ゲルニカッ!!」
「わわ?!ウサギ?!」
「ゲルニカ!待って!」

人ごみをすり抜ける様にゲルニカはどんどん走って行ってしまう。誰かに蹴り飛ばされたりしたらゲルニカが…!

「ゲルニカ…!」
「おっと!ん~?どうした?ゲルニカ、ご主人様は何処行ったんだ?」
「…………………………………………。」
「あれ、居るんじゃん。はい。」
「…お前誰だ?」
「え?ああ…シャルロットです。」
「…イエローはどうした?!眼鏡は?!変装か?!」
「いや、単に着替えただけ…。」

よく『眼鏡を取ると別人』なんて漫画があるけど、正直誰だか判らなかった。これは一種の詐欺ではないだろうか?眼鏡が無いと印象が違う上に服が違うから何と言うか、凄く普通だ。

「シャルロット意外と綺麗な顔してるじゃないか!」
「何を急に。」
「今まで隠してたのか?勿体無いな。目が悪くないならそのままで居ろ。」
「まぁ、そのつもりだけど。人も居るし。」

そう言うとシャルロットはラウンジへ歩いて行った。そうか、今までイエローだったから逆にあの姿だと誰だか判らないのか…。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

DollsGame-113.パセリ-

コロンブスの卵

閲覧数:110

投稿日:2010/09/11 23:29:14

文字数:1,064文字

カテゴリ:小説

クリップボードにコピーしました