しばらくして、泣き止む木下。
「…なんでこんな面倒くさいのとつきあってるのよ」
顔をぐしゃぐしゃにしながら木下がいう。木下自身は、自分が泣いている時に周囲に顔を見られないように高野が対処してくれたことは分かっていたが、どうしても素直に感謝の気持ちを言葉にできない。
「…そんな面倒くさい奴とつきあいたがる奴が一人位いたって、世の中の害にはならねえだろう」
「…そうやって、あなたはいつも私の質問をはぐらかすのね」
少し悔しそうな表情で話す木下。彼女自身は、高野とつきあって、いつも高野が一枚上手なのは分かっていた。
(…きっと、私は、ずっとこの人には勝てないわ)
そう思うのだが、その事実が分かっても、特に悔しいとは思っていない木下。自ら自分のような面倒くさい人間と快くつきあってくれるのは、本当に感謝している。
(俺は結構可愛いと思うんだけどな…)
一方、そんな木下を見て思う高野。そうは思うのだが、それを本人にいうと、ムキになって否定されるのは分かっているので、口にはしなかった。
「…それで、頼みは何?」
「あいつに色々と話してアドバイスをしてやって欲しいんだよ。お前のできる範囲で構わねえからよ」
「…分かったわ。…だけど、私の話を聞いて、神波君が打ちのめされないかしら?」
先ほどとは一転、真面目な表情で話す木下。
「…お前なら、オブラートに包んで話せるだろ?」
優しげな表情で話す高野。彼は、木下が本当は優しい性格であることを知っており、彼女がPとして活動していた時に、何があったか知っている数少ない一人だった。色々な誹謗中傷を浴びて深く傷ついたからこそ、言葉の持つマイナスの力を理解している。彼女の力を持ってすれば、その力を加減することも容易である、と高野は踏んでいた。もっとも、その彼女の心を開くことが難しいことも分かっていた。
「あなたの可愛い後輩のためよ。何とかしてみせるわ」
「…繰り返すが、こっちから頼んでおいていうのも何だが、無理はするなよ」
「…無理するなっていうなら、最初から言わないでよ」
「…俺はお前のこと、信じてるからよ」
その高野の言葉に、顔を真っ赤にする木下。
「…本当に、あなたは、そんな恥ずかしい言葉を臆面も無く…」
「こんな言葉、俺だってそうはいわねえさ。お前だからいえるんだよ」
そういう高野の表情も、少し恥ずかしそうだった。お互いが赤くなっていることに気がついたのか、声を抑えながら笑う二人。木下の表情は、少しだが穏やかになったようだ。
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