絶えず思う。
こんな『嘘の日』に生まれた私が生まれたことを誰も歓迎なんてしてないんじゃないかって。
誕生日はなんだか憂鬱。
皆の笑顔が果たして本当なのか、わからないから。
皆の言葉がどうして本物なのか、知る術も無いから。
これはそんな私の物語。
今日は私の誕生日。
本来ならば誕生日といえばケーキ、プレゼント、みんなのおめでとうの声、幸せな一日のはずだ。
でも私はどうも気分が優れない。
今日は4月1日、「エイプリルフール」だ。
皆、嘘をついても許される日。
そんな日に生まれた私。
被害妄想かもしれないが、私の存在が『嘘』だといわれているような気がしてならない。
ああ、どうしてこんな誕生日が喜ばしく思えよう。
ただ、年を取るだけなのに。
あーあ、もう嫌だなぁ。
そんなことを思いながら、昨晩来たメールを見返す。
皆で明日、ルカの家に集まろうという物だった。
まあ、一応私も呼ばれたみたいだから足を運んでいる、今はその真っ最中だ。
ルカの家は何度見ても立派だ。
立派といってもごく普通の一戸建てなのだけれど。
まあもうすぐ結婚するみたいだから、普通なのかもしれない。
「おじゃましまーす」
と私が家に上がると、もう、ルカ、ミク、リン、レン、メイコ、カイト……と皆集まっていた。
「あっ遅いよテトちゃん!」
「おいそんなこと言うなよリン! テトちゃんにも用事ってもんが……」
「さあこっちこっち、座って座って。今日の主役はテトちゃんなんだから! ね?」
「ケーキも用意してるのよ、それにプレゼントだって」
「おめでとうテトちゃん」
「お誕生日おめでとう!」
皆のあったかい笑顔と言葉。
でも私は嬉しさとかそういうのじゃないもので胸がいっぱいになって、なんだか泣いてしまった。
うれしい、うれしい、うれしいよ。
なのに、なんで。
「て、テトちゃん!? 泣くことないじゃない! ええ!!?」
「おなか痛いの? リンが治してあげよっか?」
「おまえにそんなことできねぇだろ」
「できるもん! レンのばか!」
皆が心配してくれる。
うれしい、うれしいのに。
「ごめんなさい、違うの……」
私がそう言うと、皆はちゃんと耳を傾けてくれた。
「何が?」
ルカが私に問いかけた。
「みんなの気持ちはすごくうれしいの……でも、今日は……エイプリルフールじゃない……。皆には悪いけど、私……どうしても、本当に私の誕生日を歓迎してくれる人なんて、い、いないんじゃないか……って、おも、思ってて……」
静まり返った空間。
皆きっと動揺してるんだ。
私がこんなこと言うから、どうしたらいいかわからないんだ。
「……馬鹿だな」
そう言ったのはレン君。
「歓迎してないわけないだろ、そもそも嘘をつくためにこんなところにあつまんねぇだろ」
「んもうレン! もっと優しい言い方があるでしょ! ……テトちゃん、私たちみーんな一緒だよ? テトちゃんが生まれてきてくれて、本当によかったと思ってるの、だから……泣かないで、テトちゃん、ね?」
皆の顔を見渡すと、皆微笑んでいた。
それでまた涙が出た。
「さーケーキを食べよう! 僕が特注で用意した、アイスケーキだよ!」
「それはお前が食べたいだけだろ、カイト」
促されるまま、皆とテーブルの周りに座り、大きなケーキを囲んだ。
ケーキの上にはこれまた特大のチョコレートプレートが乗っていて、「テトちゃん、お誕生日おめでとう」と書かれていた。
うれしかった。
「ありがとう」と呟いてみたけど、それは聞こえてないみたい。
でも、それでもよかった。
頬を伝う涙で、ケーキは少ししょっぱかったけど、今までで一番美味しかった。
来年の誕生日は、何があるだろう。
ちょっぴり楽しみだな。
【テト誕】嘘の日【イズミ草】
一日遅れましたが、テトちゃんお誕生日おめでとう!!!!
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