第3回目の講座はコンプレッサーについてです。
コンプレッサーはイコライザーと違い、操作できる箇所が多いので、扱い方もそれだけ難しく感じると思います。
コンプレッサーの基本的な仕組みは波形の大きな部分と小さい部分の差を小さくし、全体の音量を上げるというものです。
名前のとおり圧縮しているというわけです。
ただし、抑揚(ダイナミクス)はなくなっていく傾向になるので、状況に応じて使用するようにしましょう。
まず最初に各々のメーター、パラメーターの簡単な説明をしたいと思います。
Attack [アタック] :スレッショルドで設定した音量を超えた(コンプが動作し始める)瞬間から、元の音量がレシオで設定した音量に圧縮されるまでの時間
Release [リリース] :スレッショルドで設定した音量を下回った瞬間から、レシオで設定した音量が元の音量に戻るまでの時間
Ratio [レシオ] :元の音量に対して圧縮率
Knee [ニー] :スレッショルドで設定した音量周辺がカーブを描く度合い
Threshold [スレッショルド] :コンプレッサーが動作し始める音量
Gain [ゲイン] :出力音量
GR [ゲインリダクション] :コンプレッサーで圧縮した音量
だいたいここまではどのコンプレッサーでも搭載されているメーター、パラメーターです。
メーカーによっては名称が異なる場合もあります。
また、メーカーによっては次のような機能がコンプレッサーに搭載されているものもあります。
Limiter [リミッター] :クリップをしないように一定の音量に抑える
Gate [ゲート] :ノイズなどの低い音量をカットする
DeEsser [ディエッサー] :摩擦音などの高域の音量を抑える
※クリップ
クリップはクリッピングとも呼ばれ、『0dbを超えてメーターに赤いランプが付く状態』です。
最近のDAWではクリップしたからと言ってすぐに音が歪むと言うわけではありませんが、クリップした場合にはクリップノイズと呼ばれるノイズが発生することがあります。
また、デジタル音声の仕組み上0db以上は存在できないので避けるようにしましょう。
それでは、ひとつひとつ項目を見ていきましょう。
・Attack [アタック]
アタックとは、正式にはアタック・タイムと呼ばれます。
機能は簡単な説明をしたとおりなんですが、"スレッショルドで設定した音量を超えた瞬間から、コンプが動作し始める時間" とよく誤解されやすいので注意しましょう。
すごくわかりづらい説明になってしまいましたが、"圧縮開始時間" ではなく、『圧縮完了時間』と覚えましょう。
アタックは最短だと少しモワッとなるものの比較的、元音のイメージが残ります。
少し遅らせ、ピークよりも速くすると音の立ち上がりが原音より速くなります。
さらにピークより遅らせるとアタック音がしっかりと残ります。
・Release [リリース]
リリースとは、正式にはリリース・タイムと呼ばれます。
リリースは最短だとすぐに原音の音量に戻るので、音が最も太くなります。
だんだんと遅くしていくと余韻が抑えられタイトな音になります。
・Ratio [レシオ]
元の音量をどれぐらいの割合で圧縮するかの比率です。
数字が動いている方は元の音量で、例えば3:1であれば元の音量の1/3になるということです。
・Knee [ニー]
ひざという意味があり、ニーハイソックスなどのニーと同じです。
スレッショルドで設定した音量周辺がカーブを描くようになり、通常より時間をかけて滑らかな変化をするようになります。
・Threshold [スレッショルド]
しきい値や閾値(いきち)とも呼ばれ、ここで設定した音量を超えるとコンプレッサーが動作をし始めます。
・Gain [ゲイン]
ゲインとは、正式にはメイクアップ・ゲインと呼ばれます。
役割はアウトプット・ゲインと一緒です。
・GR [ゲインリダクション]
コンプレッサーでどれぐらいの音量が抑えられているかメーターで視覚化したものです。
コンプレッサーもイコライザーと同様にメーカーによってはMS処理の機能がついているものもあります。
こちらもまた機能がついていなくても、オーディオデータをMidとSideにわけることで処理を行うことができます。
最後にマルチバンドコンプレッサーについて少し触れたいと思います。
マルチバンドコンプレッサーはいくつかに分けた周波数帯ごとにコンプレッサーをかけることができるようになっています。
基本的な使い方は単体のコンプレッサーと同じです。
ほとんどが最大3バンドから4バンド搭載されています。
コンプレッサーに関して理解して頂けましたでしょうか?
次回はリミッターについて解説していきたいと思います。
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