その少女達は時折、辺りを窺うようなそぶりをみせながら、ゆっくりと道を歩いていく。
そんな2人を目で追っていると、アパートの近くまできていたそのうちの1人が不意にこちらの方を見上げた。
一瞬、顔をそらしたくなったが、身体が固まってしまったかのようにただそれをずっと見ていることしかできなかった。
その少女は、今の親父や未来と同じ顔をしていた。
どういう反応をすればよいのかわからなかった。
それは向こうも同じだったのか、少女は表情を変えることもなくこちらを見上げたまま歩いていき、やがて家屋の陰に消えていった。
その時、こちらに背を向けている親父や未来に、振り向いてほしくないと思った。
2人の顔があの少女達と同じだということを認めたくなかったわけじゃない。
ただなぜか、親父や未来が今どんな表情をしているのか知りたくなかった。
突然、未来が身体の向きを変えて残っていたトーストを口に押し込むと、押し入れの前に行き襖を開けて何かを探し始めた。
少女の体型をした未来の後ろ姿。
それから視線をはずしまた外を見ると、そこには見慣れたはずの町の景色がある。
セミの声があふれていて。
でも今はそこには誰もいない、駐車場に止まった十数台の車は動く気配はないし、玄関先を掃除する人の姿も見えない。
「御父さん、これ!」
未来のその声に振り向くと、彼女はモノクロの事務用ノートと、焼き菓子が入っていた少し大きめで平たい白色のブリキの箱を持っていた。
この箱は今は文具入れになっている。
ちなみに未来はこの部屋のことは知り抜いている、どこに何があるのか、とか。
なぜなら休日には掃除とかもしてくれているからだ。
ちゃぶ台の上にあったコップや皿を端に寄せてそこに開いたノートを置くと、未来は取り出した円形の黒い朱肉ケースを開け、それに親指をにじるようにして押し当て始めた。
そしてノートにその親指を押しつける。
近寄り覗き込むと、灰色の罫線だけが引かれた何も書かれていないページの真ん中に、はっきりとした朱色の指紋があった。
【小説】俺と70億の鏡音リンちゃんと激しく降りそそぐ流星群(12)
ある日、突然、世界中の99.9999%の人間が少女(鏡音リンちゃん)になってしまった。
姿も声もDNAも全て同じ、違うのはそれぞれが持つ記憶だけ。
混乱に陥る人間社会の中で、姿が変わらなかった数少ない人間の1人・佐藤悟は…というお話。
なお携帯電話で見ることを前提としているので、独特の書き方をしています。
・文の終わりに改行。
・段落ごとに1行空ける。
そのため、段落の1字下げなどは省いています。
逆に見辛くなってたら、すいません。
意見があれば見直します。
コメント1
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ご意見・ご感想
日枝学
ご意見・ご感想
読んでますよー! 相変わらず、面白さが衰えることなく続いていて良いですね。この話がどう展開していくのか、楽しみにしています――って、けどこれ物語の結末つけるの難しそうですね(笑 自分だったらどう結末つけるか、頭抱えて悩むことになりそうです。執筆、無理しない程度にファイトです! 続き楽しみにしています。
2011/09/12 18:50:54
リンちゃんの使い魔
また普通に返信してしまった…一応、こちらでも。
いつもコメントをくれて、ありがとう!^
2011/09/12 23:47:07