静寂に燻る君の紫煙の香り
雨に打たれて冷えた手が悴む
揮発する肌、斑に色付いては甘い酩酊
テロメアの告白
座礁する鯨は夜の底
季節に擦れて昏い朝に飛び交う海辺の鴉、痩せた胸を啄む
嗄れたラナンキュラス
茹だる咽喉に息が伝う
瞼の裏に寄生するアンタレス
褪せたネガフィルムの笑顔
穏やかな春に意識はない
冷めた金星
凭れるリネン室の壁一面に腫れた火傷の痕
焼けて落ちる旅客機には二人の眠る小さなベッドを乗せて
影を引いた、止まる電車
さかなの体温が泳ぐ
あの日の君は背の高い草花に隠れてもう見つからない
いつかそんな日々の骨が土に還るように、祈って
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